先手番の優位性とコミの効力についての考察

手番による有利不利が大きい囲碁における先手番の優位性と,手番や実力による差を埋め合わせるハンデであるコミについて考察する.

コミについて

コミ6目半での手番と勝率

コミ5目半での手番と勝率

コミ4目半での手番と勝率

コミの違いと対局結果(分布)の関係

競技者の棋力分布を考慮した評価

コミ数5目半から6目半への変更

参考(韓国棋院の手番別勝率)

補記

コミについて

まずは囲碁におけるハンデキャップであるコミについて確認も含めて簡単に記述する.

コミ6目半での手番と勝率

表1:持ち時間別の勝敗(~2018年)

持ち時間区分 対局数 黒番勝ち数 白番勝ち数 黒番勝率
超早碁 332 180 152 54.22%
早碁 4187 2133 2054 50.94%
45分 110 49 61 44.55%
1時間 8922 4423 4499 49.57%
90分 445 225 220 50.56%
2時間 362 173 189 47.79%
3時間 41664 21160 20504 50.79%
4時間 2525 1277 1248 50.57%
5時間 4186 2099 2087 50.14%
8時間 255 132 123 51.76%
持ち時間不明 69 34 35 49.28%
合計 63057 31885 31172 50.57%

表2:対局年別の勝敗

対局数

黒番勝ち数

白番勝ち数

黒番勝率

合計

58559

29660

28899

50.65%

2002~2003

3645

1836

1809

50.37%

2004

3680

1872

1808

50.88%

2005

3864

1906

1958

49.33%

2006

3375

1736

1639

51.44%

2007

3469

1767

1702

50.94%

2008

3500

1820

1680

52.00%

2009

4126

2075

2051

50.29%

2010

3820

1927

1893

50.45%

2011

3747

1886

1861

50.33%

2012

3746

1943

1803

51.87%

2013

4020

2013

2007

50.07%

2014

3922

1992

1930

50.79%

2015

4740

2368

2372

49.96%

2016

4579

2340

2239

51.10%

2017

4325

2178

2147

50.36%

2018

4889

2436

2453

49.83%

参考1

2008年に日本棋院より発表されたデータの引用.層の分類の仕方は異なる.ここにも特に際立った特徴はない.

表3: コミ6目半に移行後の手番別の成績(日本棋院公式サイトより)

 

対局数

黒番勝ち

白番勝ち

黒番勝率

合計 (①+②+③+④)

23141

11758

11383

50.8%

挑戦手合 ①

229

116

113

50.7%

リーグ戦 ②

561

292

269

52.1%

本戦 ③

3435

1707

1728

49.7%

予選 ④

18916

9643

9273

50.1%

予選を除く(①+②+③)

4225

2115

2110

50.1%

対局結果の分類

表4:結果種別割合

結果種類

対局数

割合

黒番

白番

中押し勝

26306

64.2%

13470

12836

作り碁勝

14379

35.1%

7150

7229

時間切れ勝

230

0.6%

109

121

反則勝

27

0.066%

16

11

棄権勝

3

0.007%

3

0

表5:作り碁での目数差の分布

目数差

対局数

割合

黒番勝ち数

白番勝ち数

0.5

2059

14.32%

1046

1013

1.5

1971

13.71%

986

985

2.5

1804

12.55%

919

885

3.5

1618

11.25%

853

765

4.5

1418

9.86%

692

726

5.5

1173

8.16%

571

602

6.5

983

6.84%

482

501

7.5

788

5.48%

360

428

8.5

608

4.23%

308

300

9.5

422

2.93%

208

214

10.5

360

2.50%

153

207

11.5

269

1.87%

135

134

12.5

214

1.49%

110

104

13.5

157

1.09%

89

68

14.5

128

0.89%

53

75

15.5

96

0.67%

38

58

16.5

75

0.52%

37

38

17.5

49

0.34%

22

27

18.5

47

0.33%

20

27

19.5

24

0.17%

9

15

20.5以上

116

0.81%

59

57

コミ5目半での手番と勝率

表6:コミ5目半での年別先手番勝率

対局数

先手勝ち数

後手勝ち数

先手勝率

合計

86234

45631

40603

52.9%

1960まで

542

299

243

55.2%

1961

256

147

109

57.4%

1962

288

162

126

56.3%

1963

408

211

197

51.7%

1964

421

209

212

49.6%

1965

467

256

211

54.8%

1966

443

236

207

53.3%

1967

581

316

265

54.4%

1968

502

253

249

50.4%

1969

569

310

259

54.5%

1970

646

349

297

54.0%

1971

664

368

296

55.4%

1972

665

366

299

55.0%

1973

699

369

330

52.8%

1974

876

468

408

53.4%

1975

1032

547

485

53.0%

1976

1713

903

810

52.7%

1977

1826

1004

822

55.0%

1978

1907

1042

865

54.6%

1979

1934

1014

920

52.4%

1980

2155

1177

978

54.6%

1981

1953

1080

873

55.3%

1982

2208

1175

1033

53.2%

1983

2148

1125

1023

52.4%

1984

1998

1053

945

52.7%

1985

2121

1121

1000

52.9%

1986

2302

1142

1160

49.6%

1987

2347

1244

1103

53.0%

1988

2621

1367

1254

52.2%

1989

2966

1612

1354

54.3%

1990

3254

1716

1538

52.7%

1991

3028

1631

1397

53.9%

1992

3282

1747

1535

53.2%

1993

3396

1796

1600

52.9%

1994

3496

1814

1682

51.9%

1995

3862

2022

1840

52.4%

1996

3674

1966

1708

53.5%

1997

4015

2091

1924

52.1%

1998

3946

2074

1872

52.6%

1999

3757

1980

1777

52.7%

2000

3655

1914

1741

52.4%

2001

3778

1915

1863

50.7%

2002

3450

1835

1615

53.2%

2003

383

205

178

53.5%

図1:コミ5.5目での先手番勝率の推移

表7:コミ5目半での対局種別成績

 対局種

対局数

先手番勝ち数

後手番勝ち数

先手番勝率

七大タイトル挑戦手合い

782

399

383

51.0%

2日制対局(三大棋戦決勝)

406

211

195

52.0%

早碁

3913

2094

1819

53.5%

合計

69189

36501

32688

52.8%

コミ4目半での手番と勝率

表8:コミ4目半での手番別勝敗数

対局数

先手番勝ち数

後手番勝ち数

先手番勝率

合計

9004

5027

3977

55.8%

1950まで

215

113

102

52.6%

1951

48

26

22

54.2%

1952

63

39

24

61.9%

1953

93

58

35

62.4%

1954

87

44

43

50.6%

1955

198

121

77

61.1%

1956

130

77

53

59.2%

1957

359

199

160

55.4%

1958

374

222

152

59.4%

1959

417

243

174

58.3%

1960

446

228

218

51.1%

1961

385

211

174

54.8%

1962

398

235

163

59.0%

1963

428

242

186

56.5%

1964

390

216

174

55.4%

1965

406

246

160

60.6%

1966

374

213

161

57.0%

1967

525

300

225

57.1%

1968

470

252

218

53.6%

1969

418

241

177

57.7%

1970

559

306

253

54.7%

1971

571

317

254

55.5%

1972

553

313

240

56.6%

1973

563

286

277

50.8%

1974

486

254

232

52.3%

1975

48

25

23

52.1%

 コミの違いと対局結果(分布)の関係

表9:コミの違いによると対局結果の比率

コミ数

中押し碁

作り碁

その他

5.5

64.0%

35.2%

0.8%

6.5

64.2%

35.1%

0.7%

図2:盤面上での目数差の分布

競技者の棋力分布を考慮した評価

表10:コミ数と先手番勝率推定値の関係

コミ数

先手番勝率推定値 [%]

0.0

69.7

1.5

65.6

2.5

62.8

3.5

59.9

4.5

56.9

5.5

53.9

6.5

50.9

6.8~6.9

50.0

7.0

49.5

7.5

48.1

表10は対局者間の棋力差がないと仮定したときの先手番勝率の推定値であり,単純な結果の平均値とは異なる.

コミ数5目半から6目半への変更

参考(韓国棋院の手番別勝率)

表11:韓国棋院対局の手番別勝敗数(コミ6目半対局のみ)

対局数

先番勝ち数

後番勝ち数

先番勝率

2003

470

220

250

46.8%

2004

457

200

257

43.8%

2005

596

292

304

49.0%

2006

661

323

338

48.9%

2007

832

428

404

51.4%

2008

738

380

358

51.5%

2009

537

302

235

56.2%

2010

793

400

393

50.4%

2011

804

393

411

48.9%

2012

1394

712

682

51.1%

2013

983

472

511

48.0%

2014(1~8月まで)

532

293

239

55.1%

合計

8797

4415

4382

50.19%

補記

細かい話は以下でする.

“真に公平なコミ”

棋力モデル

コミ4.5目の対局での手番の割り振り

コミ0目の対局の手番別勝敗数

コミの効力の定量的な評価について

実力差区分別の先手番勝率の理論値と実測からの推定値の比較

先手番の優位性の検証例

置き碁とコミ数の関係

その他

“真に公平なコミ”

  1. 19×19では双方が最善[この場合の最善は終局時の地の差を1目でも有利にすること]を尽くすときに明らかに先手は後手を皆殺しすることはできない(先に盤面に打ったからといって盤上全てを先手の地にすることはできない).
  2. 仮に先手番が(後手番に与える)コミ数Nで必ず勝つことができるのなら.N以下のコミ数でも必ず勝つことができる.

コミ数

勝敗

N未満

先手番の勝ち

N

持碁

N+1以上

後手番の勝ち

コミ数

勝敗

M未満

先手番の勝ち

M~L-1

無勝負(あるいは持碁)

L以上

後手番の勝ち

棋力モデル

図:棋力モデル1

図:棋力モデル2

コミ4.5目の対局での手番の割り振り

実力上位者の手番

局数

先手番

3865

後手番

3897

コミ0目の対局の手番別勝敗数

対局数

52012

先手番勝ち数

29602

後手番勝ち数

21251

持碁数

1159

先手番勝率

58.0%

コミの効力の定量的な評価について

  1. プレイヤーの棋力は数値表現できる.
  2. プレイヤー間の棋力の差から,その対局結果の勝率を推定できる.
  3. 棋力の差と勝率の関係はロジスティック分布に従う.
  4. コミの効力はプレイヤーの実力によらず一定とし,後手番(あるいはコミを貰う側)のプレイヤーの棋力値に加算するとする.
  5. 先手番の効力もプレイヤーによらず一定とする.

コミ数

勝率の偏り(先手番勝率)

使用対局データ数

0.0

68.5~70.2%

2000~10000

4.5

56.8~57.0%

5000~6791

5.5

53.7~53.9%

5000~67272

6.5

50.9~51.1%

12000~29620

実力差区分別の先手番勝率の理論値と実測からの推定値の比較

表:コミ0.0目での期待勝率と先手番勝率の関係

(上位者から見た下位者への)

予測勝率値

 先手番勝率

95.0~100.0%

 58.8%

90.0~95.0%

 54.9%

85.0~90.0%

 59.7%

80.0~85.0%

 62.5%

75.0~80.0%

 65.1%

70.0~75.0%

 69.1%

65.0~70.0%

 68.3%

60.0~65.0%

 71.1%

55.0~60.0%

 72.5%

50.0~55.0%

 70.2%

合計

 66.8%

表:コミ4.5目での期待勝率と先手番勝率の関係

(上位者から見た下位者への)

予測勝率値

 先手番勝率

90.0~100.0%

 47.1%

85.0~90.0%

 51.9%

80.0~85.0%

 52.9%

75.0~80.0%

 52.9%

70.0~75.0%

 56.2%

65.0~70.0%

 55.9%

60.0~65.0%

 56.5%

55.0~60.0%

 58.5%

50.0~55.0%

 57.1%

合計

 56.0%

 

表:コミ5.5目での期待勝率と先手番勝率の関係

(上位者から見た下位者への)

予測勝率値

 先手番勝率

95.0~100.0%

 51.1%

90.0~95.0%

 51.9%

85.0~90.0%

 52.2%

80.0~85.0%

 51.5%

75.0~80.0%

 52.9%

70.0~75.0%

 52.6%

65.0~70.0%

 52.8%

60.0~65.0%

 53.4%

55.0~60.0%

 53.7%

50.0~55.0%

 53.6%

合計

 52.9%

表:コミ6.5目での期待勝率と先手番勝率の関係

(上位者から見た下位者への)

予測勝率値

 先手番勝率

95.0~100.0%

 48.7%

90.0~95.0%

 50.4%

85.0~90.0%

 50.5%

80.0~85.0%

 50.8%

75.0~80.0%

 52.2%

70.0~75.0%

 50.9%

65.0~70.0%

 51.3%

60.0~65.0%

 49.4%

55.0~60.0%

 49.7%

50.0~55.0%

 51.3%

合計

 50.7%

図:コミ0目

図:コミ4.5目

図:コミ5.5目

図:コミ6.5目

先手番の優位性の検証例

例1:棋力が同等な3人の対局例
表:棋力が同等な3人の対局結果

先番

後番

先番勝ち

先番負け

持碁

先番勝率

対象

秀策 秀和 16 6 1 0.717

全集より先番全て

秀甫

秀策

12

5

1

0.694

1857年(秀甫19歳)以降の対戦成績安定時期

秀甫

秀和

9

3

1

0.731

1860年(秀甫22歳)以降の対戦成績安定時期

(同時期に秀和が先番では,秀和2勝0敗)

例2:コミなし碁からの棋力差の推定
表:棋力に差がある場合の対局結果

先番

後番

先番勝ち

先番負け

持碁

先番勝率

互先勝率推定値

対象

秀策(24歳) 太田雄蔵(46歳) 9 0 2 0.909

0.816

30番碁全23局より

太田雄蔵

秀策

7

5

1

0.576

0.377

30番碁全23局より

例3:棋力が異なる3人での間の棋力差の推定
表:棋力が異なる3人の間での対局結果

先番

後番

先番勝ち

先番負け

持碁

先番勝率

互先勝率推定値

レーティング換算点数差

秀哉 石井千冶 17

3

1 0.83

0.69

0.73

石井千冶

秀哉

7

7

1

0.50

0.31

-0.74

石井千冶

秀栄

2

8

0

0.20

0.10

-2.0

秀哉 秀栄 3 6 1 0.35

0.19

-1.3

例4:コミなし碁からの棋力差の推定2
表:コミなし碁からの棋力差の推定(秀和-雄蔵)

先番

後番

先番勝ち

先番負け

持碁

先番勝率

互先勝率推定値

秀和 太田雄蔵 23

5

3 0.790

0.626

太田雄蔵

秀和

52

44

0

0.458

0.273

例5:コミなし碁からの棋力差の推定3
表:コミなし碁からの棋力差の推定(道策-知哲)

先番

後番

先番勝ち

先番負け

持碁

先番勝率

互先勝率推定値

道策 知哲 8

0

0

1.0

(0.9を推定値とする)

80.0%以上

知哲

道策

7

22

0

0.24

12.4%

知哲(二子)

道策(向二子)

7

3

0

0.7

17.1%

例6:コミなし碁からの棋力差の推定4
表:コミなし碁からの棋力差の推定(道策-知哲)

先番

後番

先番勝ち

先番負け

持碁

先番勝率

互先勝率推定値

因碩(10世幻庵) 丈和 24

13

0

0.648

45.1%

丈和

因碩(10世幻庵)

4

1

0

0.8

64.0%

置き碁とコミ数の関係

以下は,コミや手番についての通説や俗説などを取り上げる.

「コミの変更で過去の結果が入れ替わる」

  1. 対局者は対局前にコミ数を認識している.
  2. コミ数を踏まえた上で着手にそれが反映される.
  3. 対局条件としてのコミ数の設定に対して対局者間の同意がある.

「技術の進歩により先手番勝率は徐々に高くなり,それに応じてコミ数も増加することになった」

「初手の価値はコミ数の2倍」について

「早碁では先番の方がより有利」

(2018/02/16)