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『あり得ないこと、しんじられないことがコート上でおきるのがアジア五輪の常』とプレヴュ−で書いた。ドーハ大会では開幕前それが起きたといえる。ヨンドンの復活そのものが一つの奇跡だ。ヨンドンの現在の所属は韓国の大企業体(学校経営もおこなうコングロマリット)「農協中央会」のソフトテニス部、そこのコーチというのが現在の身分である。農協中央会ソフトテニス部は伝統ある実業団だが男子部はない。つまり現在のヨンドンは実業団の所属とはいえ、選手ではない。韓国でこういうことつまり所属のチームの無い選手が代表なることは私の知る限り例がない。
 

なお念のためにいっておくが、韓国というといまだ軍隊チームだと思っている人がいる。軍隊チームは20世紀末に消滅している。だから現在の韓国に軍属の選手はひとりもいない。実業団か学生かいずれかである。軍属がいるのは台湾であり、今年のメンバーでは3人が軍属である。ただ台湾の軍属選手は以前の韓国のサンムとはまるで違う。

団体戦初日に。ヨンドンのフラットサーブ

ソウル市体育局という比較的成立の新しい実業団があって、そこにパクキョンテという有望な新人が入ったことから、この復活劇ははじまる。彼と組むに相応しい前衛がいないとのことでソウル体育局と関係の深い農協チームの劉永東に声が掛かったというのが発端である。5月の東亜日報杯でいきなり優勝。この大会はアジア競技大会の一次予選も兼ねている。続く予選会本番でも2位に食い込み代表に復活したことはすでに書いた。

 しかし、この復帰が、ほんとうにその新人のためだったのか?どうも違うような気がする。これはやはりヨンドンの為にしかけられたような節があるのである。ただそこでほんとうに予選を勝ち復活してしまうヨンドンの力はあまりにもすごい。パクキョンテは確かに非凡な選手(スーパーライジンガーである)ではあるが、まだまだ、いや、まだまだまだまだ、ぐらいのものである。実際、ヨンドン以外のペアではまったく結果がでない。ヨンドンはこの復活にむけてとくに猛特訓を積んだということもない。いつものように農協チームのコーチをしながら片手間?に復活してしまった。もっとも練習は続けていたのだろう。パワーこそ落ちているものの、最終予選の前日に見た練習は、完璧であまりに美しく涙がでそうになった。またコーチを三年間やってきた成果か、なにか客観的な要素がでたというか、ひとつつきぬけたようなところも感じられる。ああやはりこの人は神なのだ、と心底思えるのである。あれから半年、ヨンドンはドーハでどのようなプレーをしたのか?この新連載ではヨンドンのプレーを通してドーハを振り返る。

 

 神技 劉永東の技法 part4 異空間スピンサーブ

 

ヨンドン必殺の『異空間スピンサーブ』。ヨンドンの18番といっていい。『バズーカ』、『ダブルフォワード』同様に当ページによる命名。基本的にはリバースサーブだが、とてもその言葉では言い表せない神秘的な変化をする。右に左に揺れまくり、ときにはすべり、あるいは沈み、かとおもえば沈まない、と、打球はまるで重力場から解き放たれかのような動きを見せる。レシーバは手元にくるまでバックかフォアかを判断できない、そういうシーンをなんども見せられてきた。もちろんノータッチのエースもある。例によって韓国ボールでしかできない、なんていう人がいたりするが、確かに韓国ボールだと、より効果的ではあるが、日本ボールや台湾ボールでも七色の変化を見せる。ただ変化するだけではない。その変化は完全にコントロールされている節がある。バズーカは「後はボールに聞いてくれ」というサーブであったが、この『異空間スピンサーブ』はかなり綿密にコントロールされているようだ。その制御の限界をこえるところにすごいボールがうまれたりすることもあり、なんとも芸術的である。これほど魅力的なサーブは例が無いのではないか。

アドコート
デュースコート

 基本的にはリバース回転つまりレフトスピンが主体だが、それに縦回転(アンダースピン)を巧みに組み合わせ、確認できただけですくなくとも3種の『異空間スピンサーブ』が存在する。それを状況に応じて使いわけてくる。

 すでに90年代よりヨンドンはこのサーブを取り入れているが、当時から威力はあったがバズ−カ並みの確率だった。完成度が高くなってきたのは2002年のアジア競技大会から。完成には数年を要していることになる。

キーポイントはリストの柔らかい使い方。動画をじっくりみてほしい。

 また韓国男子にはリバースサーブの名手が数多いが、基本的にはトスを頭の上から左側の空間にあげる選手がおおい。リバースサーブの性質、レフトスピン、を考えるとそれが自然なのだが、このヨンドンだけは右肩前方にトスアップする。これは極めて重要なことのように思われ、今後の研究課題だ。グリップは彼のボレーグリップと同じセミウエスタン。(ヨンドンのボレーグリップに関してはこちら(クリック))

 
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