NO.13                   カッターズ

 

「Just before wedding」

(竹下、名簿に記帳。山尾、それを見ている)

竹下 はい。これでお願いします・・・よし、行こう。

山尾 おう!相変わらず達筆だな!俺の名前も書いてくれればよかったのに。

竹下 俺は昔から人の名前は自分で書かないようにしてるの。

山尾 書道部だった中学の時から変わらないなあそのこだわり!そんなんだからホモ疑惑が発生するんだよ!

竹下 は!?何て!?

山尾 そんなんだからホモ疑惑が発生するんだよ!

竹下 一字一句違わず繰り返したな!俺の周りでそんな疑惑が起きてたの!?

山尾 誰が言いふらしたのか知らないけど、まあ、俺はそこまで気にしてないから大丈夫だぜ!

竹下 いや、まずその疑惑がデマなんだよ!そんで、その疑惑の出どころと俺のこだわりは一切関係ないと思うけど!!

山尾 まあまあ、昔のことだしいいじゃねえか!それより、主役の辻田はどうしたんだ?

竹下 まだ式まで時間あるし、親族の控室にいるんじゃないか?

山尾 なるほど。しかし辻田もやるよな〜!美和みたいなベッピンと結婚だなんてよ〜!

竹下 あいつは中学の時から野球上手くてもててたしな。

山尾 そんで、中学から付き合い始めてそのままホームインするくらい純粋なやつだしな!

竹下 ゴールインな?野球に毒されてるぞ?

山尾 しかし、同じ野球部だったのに俺とはえらい違いだぜ!あ、俺トイレ行ってくるわ!

(山尾、退場)

竹下 やれやれ、山尾は相変わらず声でかいな・・・あ!辻田だ!

(辻田、登場)

辻田 竹下!もう来てたの?

竹下 ちょっと早かったかな?それより、結婚おめでとう!

辻田 ありがとう。仕事とか忙しいだろうに、わざわざ来てくれて嬉しいよ。

竹下 親友の結婚式を休むわけにはいかないって。

辻田 嬉しいなぁ。本当にありがとう。

竹下 それに、山尾だって今日は仕事休んできてるんだし。

辻田 …え!?山尾も来るの!?

竹下 来るっていうか、もう来てるよ。今トイレに行ったけど。

辻田 あぁ〜・・・そうか・・・やっぱり来てるの・・・。

竹下 え?どうしたんだよ、そんなバツの悪い顔をして?

辻田 まあ・・・ちょっとな・・・。

竹下 まさか山尾と喧嘩でもしたか?

辻田 いや、僕じゃなくて美和が・・・。

竹下 美和ちゃんが?

辻田 ・・・山尾のことを煙たがっているというか、嫌いっていうか・・・。

竹下 ・・・なんか言ってたのか?

辻田 「山尾君が来るなら結婚式出ない」って言ってた。

竹下 それ絶対嫌ってるよ!結婚式自体挙げないって言われたんだろ!!

辻田 やっぱりか〜・・・!そうだよな〜!!

竹下 大体お前らが山尾のこと招待したんだろうが!

辻田 それが、男友達に招待状出したのが僕だったんだ。

竹下 女子には美和が出したんだよな。

辻田 うん。それが、美和に山尾が来るって言ったら顔を真っ赤にしてどなられて、危うく離婚寸前までいったんだよね。

竹下 結婚式前に離婚の危機に陥るってどんだけ修羅場だったんだよ!?

辻田 とりあえずその場は落ち着いたんだけど、今日また山尾のこと見たら式中にブチギレるかもしれないよね・・・。

竹下 その可能性大だな・・・。

辻田 竹下、お願いがあるんだけど・・・。

竹下 な、なんだよ・・・?

辻田 山尾のこと、家に帰してくれない?

竹下 絶っ対無理だ!ていうかお前らが招待した結婚式に仕事休んでまで来てくれたやつに対して、やっぱり参加させないって!支離滅裂だわ!

辻田 最悪気持ちだけもらえればいいから!

竹下 ご祝儀もらうだけかよ!!そもそも、何で美和ちゃんは山尾に来てほしくないんだよ?それが分からないことには説得もくそもないって。

辻田 確かに・・・じゃあ、今から部屋に戻って聞いてみるわ。

竹下 そこから始めないと駄目だろ。

竹下 でも、お前も山尾にそれとなく「山尾が結婚式に来ることを嫌がっているやつがいる」っていうことを匂わせてくれよ!じゃ!

(辻田、退場)

竹下 あっ!おい!・・・行っちゃった・・・そんなの匂わせようがねえよ!

(山尾、登場)

山尾 いや〜、トイレがなかなかの込み具合だったぜ!それよりも早く始まらねえかな!

竹下 お、おう・・・。

山尾 実は俺、今日の友人代表のスピーチ頼まれてるんだよなー!緊張するぜ!

竹下 よりによってそんな役割を・・・。

山尾 そうだ!ちょっと時間早いけど辻田の控室行ってみようぜ!

竹下 いや、今は行かないほうがいいと思うぞ・・・。

山尾 え?なんでだよ?

竹下 なあ、山尾・・・もしもだよ?もしも今日、辻田と美和が結婚式に来てほしくないって思ってるやつがが会場に来てたとしたらどうする?

山尾 は!?なんだよそれ!?もしかしてそんなやつがいるのか!?

竹下 いや・・・その・・・。

山尾 竹下!そういうやつが来てるんだろ!?はっきり言えよ!俺がこの手でつまみだしてやるからよ!

竹下 じ、じゃあ言うけど・・・さっき辻田に会ったんだけど・・・美和ちゃんがお前に来てほしくないって言ってた・・・。

山尾 え?

竹下 ・・・うん。

山尾 竹下・・・俺自分のことをつまみだすことなんか物理的に不可能だ!!

竹下 気にするポイントそこじゃねえだろ!

山尾 なんで俺が美和に嫌われてるんだよ!結構な額のご祝儀包んだのに!

竹下 御祝儀は関係ないだろ!

山尾 いや、給料3カ月分くらい包んだぜ!?

竹下 間違えてる!その使い道間違えてる!

山尾 結婚と言えば3カ月分じゃないの!?

竹下 後で返してもらおうな…?それより、事実美和ちゃんがお前に来てほしくないって言っていたみたいなんだから!なんか身におぼえないの!?

山尾 ねえよ!とにかく俺は理由がはっきりしないと納得できねえから!!そうだ、今から美和から聞きだしてやる!!

(山尾、退場)

竹下 お、おい山尾!・・・行っちまった・・・匂わせるつもりが、はっきり言ってしまった・・・それよりも何で美和ちゃんが山尾のことを避けているんだろう・・・?

(辻田、登場)

竹下 あ!辻田!どうだった?ちゃんと来てほしくない理由聞けたか?

辻田 ・・・うん・・・美和の奴・・・山尾にウエディングドレス姿を見られたくないんだって・・・。

竹下 ・・・は?それってつまり・・・?

辻田 ・・・山尾のことが・・・中学の時から・・・好きみたいなんだ・・・。

竹下 ええぇー!?なんだよそれ!?

辻田 僕が言いたいよ!!なんで結婚式直前に嫁さんに他に好きな人がいるって言われるとか!!

竹下 その気持ちはさすがに察せねえよ!レアケースにも程がある!

辻田 ちくしょう・・・中学の時に告白した時も、初めてキスをした時も、一緒に夜を明かした時も、プロポーズをした時も一切断らなかった美和がなぜ・・・!

竹下 なんかムカつく。

辻田 連帯保証人になってくれた時も・・・。

竹下 結婚のスタート地点がうしろすぎるな。

辻田 はぁ・・・本当に好きみたいなんだよ・・・ほらこれ、山尾が美和に渡したラブレターなんだけど、今日も持ってきてるんだよ・・・。

竹下 マジか・・・と、とりあえず山尾に話したほうがいいと思うぞ?ちょっと探してくるわ!

(竹下、退場)

辻田 くそ・・・なんでったってこんなことになったんだ・・・?

(山尾、登場)

山尾 このホテル広すぎるだろ!どこが控室なのか全然分からなかった!あ!!辻田!

辻田 や、山尾・・・来てくれたんだ・・・。

山尾 親友の結婚式に来ないわけにはいかないだろ?それより、美和が俺に来てほしくないっていうのを聞いたぞ!理由を教えてくれよ!

辻田 こらぁあ!!

山尾 うおっ!?な、なんだよ!?

辻田 お前が!中学の時に!美和に宛てた!恋文のせいで!僕たちは破局の危機だー!

山尾 は!?なに言ってるんだよ?俺、ラブレターなんか書いた事ねえよ!

辻田 嘘つけ!美和がこのラブレターを今日も持ってきてたんだよ!読んでみろよ!

(辻田、手紙を山尾に渡す)

山尾 これがその手紙か?「僕は、野球部で活動しています。話したいことがあるから、放課後体育館裏に来てください。」・・・あぁー!!この手紙!!

辻田 思い出したか!この手紙を美和の机に入れただろ!?それを美和は見てたんだよ!手紙をくれた人を忘れられないって言ってたんだよ!!

山尾 ・・・確かに、俺が机に入れたけど、別のやつに頼まれて机に入れたんだよな〜。

辻田 えぇ!?じゃあ、山尾が美和に告白したわけじゃないの!?誰から手紙を受け取ったんだよ!?

山尾 え〜っと・・・。

辻田 僕もお前も知ってるやつだろ!?

山尾 た、竹下から受け取ったわけじゃないぞ!?

辻田 竹下ぁー!

(辻田、退場)

山尾 ・・・ものすごいダッシュで行ってしまった・・・野球部のエースだったころと何も変わらない・・・いや、そうじゃなくて!竹下はどこ行った!?

(竹下、登場)

竹下 あ!山尾!さっき控室に行ったんだけど、辻尾がいなくてさ・・・でも安心しろよ!俺がこの誤解を解いてやるからな!

山尾 竹下!今すぐ帰れ!

竹下 ものすごい勢いで裏切られた!なんだよそれ!

山尾 今さっき、辻田に会ったんだけど、ラブレターが美和に渡って、辻田が竹下を殺しかねない!

竹下 意味が分からない!端的すぎるんだよ情報が!!ラブレターって何さ!?

山尾 え?ああ、これだよこれ!どうやら美和は、この手紙の差出人に思いを寄せつつ、今日を迎えてしまったらしいんだよ!

竹下 ・・・この手紙・・・どっかで見たことがあるような・・・ちょっとその手紙見せてみろ!

(山尾、竹下に手紙を渡す)

竹下 あぁー!!思い出した!!この手紙、俺が書いたんだった!!

山尾 なにぃ!?ってことは、結果として美和が好きなのって・・・竹下!?お前が諸悪の根源か!!

竹下 そ、そんなわけないだろ!っていうか、手紙をちゃんと読めよ!

山尾 え?・・・そういえば変だよな・・・お前は書道部だったけど、手紙には「野球部で活動してる」って書いてあるし。

竹下 そうそう!っていうか、今思い出したけど、この手紙、俺がお前に机に入れてくれって頼んだんだろうが!!

山尾 へ?そうだったっけ・・・?

竹下 そうだよ!あ〜、どんどん思い出してきた!俺は書道部があるからって言って、おまえに手紙渡したじゃん!

山尾 ・・・あ、そうだった!・・・そうだ!そんで、いきなりお前が俺に手紙渡してきたから、「竹下はホモ」って俺が言いふらしたんだった!

竹下 その疑惑の出どころお前だったのか!全てお前のせいじゃねえか!

山尾 全てってことはねえだろ!そんで、素朴かつ重要な疑問なんだけど、なんでお前がこの手紙書いたんだ?

竹下 え〜っと・・・確か、「竹下は字がきれいだから、清書してくれ」って辻田に頼まれたんだっけな。

山尾 そうか・・・えぇーーー!?一周して元に戻った!!最初から辻田が美和に告白していたようなもんじゃねえか!!

竹下 本当だ!

山尾 っていうか、大体お前が手紙に差出人を書いていないからこういうことになるじゃねえか!

竹下 だって、俺は人の名前を書かないっていうこだわりがあったわけで・・・。

山尾 そのこだわりがこんな大事に発展するとは・・・と、とりあえず辻田と美和に知らせねえと!

(辻田、登場)

竹下 ・・・あ!つ、辻田!

辻田 た、竹下あぁあ!!!ここで会ったが100年目ぇ〜!!!

山尾 早まるなぁ〜!!









竹下 いや〜、大変だったな。でも、結婚式も無事終わってよかったよ!

山尾 本当だよ!お前に引きずられながら説明するのは大変だったんだからな!

辻田 僕の足腰もまだまだ健在だっただろ?

竹下 改めて、ごめんな?差出人書かなくて。

辻田 僕こそ、二人を疑って悪かった。

竹下 ちゃんと美和とも話したか?

辻田 ああ。「隠し事をしててごめんなさい。」って言ってくれたよ。

山尾 俺も変な疑惑を言いふらして悪かった!

竹下 許さねえよ。

山尾 え!?この流れで許してくれねえの!?

辻田 まあまあ、せっかく無事に終わったんだし、いいじゃないか。

竹下 ったく、しょうがねえな。

山尾 それより、仲直りと誤解が解けたのと、2次会に突入したんだから盛り上がろうぜー!俺向こうの席行ってくるわ!

(山尾、退場)

辻田 相変わらず声でかいな。

竹下 ・・・そういえば式の途中気になったんだけど、何で美和はお前からの告白にOKしたんだ?

辻田 え?

竹下 だって、山尾から手紙をもらったと思ってたんだろ?その時からプロポーズまで断らないって何でなんだろうなって・・・。

辻田 あぁ、それもさっき聞いたんだ。

竹下 え?何てったの?

辻田 「私、一切断らない性格なのよね」って。

竹下 ・・・それだけ!?

山尾 結婚おめでとー!!!


 

哲夫

スラガラ

KK

夏草

オフィユカス

田んぼマン

合計

20

58

67

61

74

66

66

75

487

〇なんというか、非常に状況が飲み込みにくいと思いました。
特にわかりにくかったのがラブレターの差出人が竹下だと判明した場面で、
誰が書いたのか・誰が机に手紙を入れたのか・誰が美和を好きなのか等設定が後出しで
二転三転しており状況を整理するのに時間がかかりました。
笑い以前の段階でつまづいていた印象です。

ネタの序盤と終盤でホモのサンドイッチになっている点についてあとで弁解を。

〇好きなフレーズ
・給料3カ月分くらい包んだぜ!?
・竹下!今すぐ帰れ!

話がすごく作り込まれてたと思います
そのせいで3人の関係性がこんがらがったりしたんですが、そこは自分の理解力のせいなんでまあまあ
ただ話の展開に重き置きすぎて明確な笑いどころが少ないかなぁ、と思いました
設定自体がボケといえばボケなんですががが

〇質の良い喜劇を見させていただきました。
全体的な取りこぼしもなく、スムーズに話の展開の邪魔をしない笑いが来たのでとても読みやすかったです。
…つまり、裏を返せば、爆発力が足りませんでした。
綺麗な喜劇で大爆発、ってのは難しいものですねえ…。

〇これはスタンダードなすれ違いネタですね。一人ひとりの立ち位置やそれを生かした展開が非常にしっかり作られているネタだと思います。
ただ、それ以上を突き抜けなかったのが残念。スタンダードすぎてオリジナリティが足りない気がします。
基本的なネタの形は非常にレベルの高いものであるので、そこに自分にしか出来ないような表現や要素を盛り込んで欲しかったかなと。
逆にここまで綺麗な構成のネタを作れるのは、パワーで押せ押せタイプの身からすれば尊敬に値するんですけどもね。

〇カッターズって8823さんだよね? すげー面白かった。
寸劇としてはちょっと弱いんだけど、どう展開するんだろうっていう期待感が大きかった。
150行ものネタで何が重要かって飽きさせないための期待感なわけであって、それをよく理解してる。
余談ですけど、自称断れない性格の女子って死ねばいいですよね。

〇これすごくいいネタだと思うんです。展開もボケも良かったですし。
ただオチがあまりにも弱すぎます、ネタ中でもオチに引っ張れそうなボケが何個もあったのになぜこんな弱いオチなんですか。
そこだけが残念でした。

〇起承転結がお手本通りで山場の作り方もうまいし、読み手側を裏切るような展開もしっかりと描けていました

とにかく綺麗だったなというのが印象的過ぎてもう一歩アホアホ感が出せればなぁとも思いますが


 


 NO.14                   血華美人は愛の華

 

「あの日来た女の名前を僕達はまだ知らない」

キヨミ:……牛肉、ネギ、しいたけ、白滝、豆腐……盗った品物はこれで全部……?

翔太郎:そうだよ、見りゃわかんだろ刑事さんよ。

キヨミ:店長だよ。何の国家権力も持ってないスーパーの店長だよ。
    ていうか初めてだよ……万引きした商品だけで鍋作ろうとしたチャレンジャー……。

翔太郎:ただの鍋じゃねぇよ、キムチ鍋だよ。(スーパーの袋からキムチ鍋の素を取り出す)

キヨミ:素だけは普通に買ってんだ!?こんなにごっそりいっといて!

翔太郎:何か買っとかないと罪悪感で悪夢見るんだよ。

キヨミ:じゃあ盗むなよ!悪夢に苛まれるほど後悔してるなら盗むなよ!!

翔太郎:こないだなんかエバラのロゴに触手が生えて東京を滅ぼす夢見ちゃってな。

キヨミ:すげぇ精神状態だね!?ていうかこないだって、あんた常習犯!?

翔太郎:しかしキムチ鍋の素を定価で買った途端、エバラのロゴに触手が生えて東京中のゴミを拾う夢に変わったんだ。

キヨミ:絵面変わってないよ!相も変わらず東京は触手の海の中だよ!

翔太郎:まぁ、そういうわけだから。今回の万引きは勘弁してください。

キヨミ:どういうわけ!?私アンタのナイトメアの話しか聞いてないんだけど!?

翔太郎:頼むよー、ウチで待つ4人の弟がキムチ鍋を欲してんだよー。

キヨミ:知らないよ!アンタの食卓事情知らないよ!

翔太郎:2年前に父ちゃんがトンボ追っかけて失踪して以来、俺が父親代わりなんだよ。

キヨミ:なんだその無邪気な失踪!
    ていうかアンタ高校生でしょ?万引きは犯罪だって習わなかったの!?

翔太郎:習ったよ、江戸時代の辺りで習ったよ。

キヨミ:日本史なの!? 私はてっきり道徳の管轄内かと!

翔太郎:アレだよな?ザビエルはキリスト教と万引きを伝来したんだよな?

キヨミ:するか!ザビエルそんなたちの悪いこと持ち込んでないわ!

翔太郎:まぁそんなわけだから、今回の万引きと今月の学費未払いは勘弁してください。

キヨミ:後者は学校に言えよ!!はぁ……アンタ全く反省してないみたいだね……。

翔太郎:反省してるよ。あの時俺が止めていればあの事故は……!!

キヨミ:何を反省してんの!?無関係のトラウマはしまっておいてよ!
    もういいよ、家に連絡するから。家の番号教えなさい。

翔太郎:206号室。

キヨミ:部屋番号聞いてないわ!アンタのアパートに押しかけるつもり無いわ!

翔太郎:狭いアパートで弟達とむさ苦しく鍋をつつく俺の気持ちがわかるか!

キヨミ:わかりたくもないよ!いいから、この紙に家の電話番号書いて!

翔太郎:へいへい……ほら、これでいいんだろ警視総監さんよ。

キヨミ:店長だっつーの。何で出世してんのよ……。(ピポパピポパ)

翔太郎:あ、多分今の時間帯なら発明家志望のニートの次男が出ると思うぞ。

キヨミ:いらん情報いれてこないで!とりあえず黙ってて!(プルル、プルル)

翔太郎:チッ……やっぱネギも定価で買った方が良かったか……。

キヨミ:あ、もしもし。私、ジェロニモマートの店長の山石と申します。
    はい、実はお宅の翔太郎君がですね、当店で万引きをしまして。はい。

翔太郎:待てよ?だったら逆にキムチ鍋の素以外全部定価で買えばいいのか?

キヨミ:ええ、はい。全然反省してなくて。あ、いや、鍋の話は本人から聞きました。
    ええ、わかりました、お待ちしております。(ピッ)

翔太郎:いや、そんなことしたらキムチまみれのゾンビに江東区を埋め尽くされる夢を見る……。

キヨミ:何ブツブツ言ってんの!?電話中邪魔で仕方なかったんだけど!

翔太郎:うわっ!キムチゾンビだ!!

キヨミ:店長さんですけど!?何と間違ってくれてんの!?

翔太郎:そんなこと言って油断させて、俺をエバラの正社員にするつもりだろ!

キヨミ:どうしちゃったの!?私が電話してる間に何があったの!?
    とにかく!今家に電話したから、もうすぐお母さん来てくれるから。

翔太郎:………は?何言ってんだよ大統領……。

キヨミ:もう出世のレベルじゃないね。いや、お母さん来てくれるって……。

翔太郎:俺んち……母ちゃん、いねぇぞ………?

キヨミ:………。
    …………。
    ……………。





    ……………うぇ?

翔太郎:母ちゃんは3年前、珍しい蝶を追っかけて、崖に落ちてそれっきりだよ……。

キヨミ:似たもの夫婦……う、ウソだよね!?作り話だよね!?
    あははやーめーてーよーしーばーくーぞー……。

翔太郎:ウソじゃねぇよ!!俺が母ちゃんを止めてりゃあんな事故は……!!

キヨミ:さっきのトラウマそれ!?いや待ってよ、確かに女の人の声だったよ!?お姉さん!?

翔太郎:俺んちは男兄弟だよ!俺以外全員平泉成みたいな声だよ!

キヨミ:極端!!ちょっと待ってよ……じゃ、じゃあ今から来るのって……。

翔太郎:……………。

キヨミ:……………誰……?

翔太郎:誰だぁぁぁぁぁ―――――――――――っ!!!
    俺んちに勝手に上がり込んだのは誰だぁぁぁぁぁ―――――――っ!!!
    もうすぐここに来るのはだぁぁぁれだぁぁぁぁぁ――――――――っ!!!

キヨミ:(ぴんぽんぱんぽーん)
    従業員に告ぐ従業員に告ぐ!!!
    今すぐ全ての入口を封鎖せよぉ!!特に女性客を絶対に入れるなぁぁぁぁぁっ!!!

翔太郎:どうしよう人事部長、誰が来るんだよ人事部長!助けてくれよ人事部長!

キヨミ:落ち着いて!?そして私を店長と呼んで!?

翔太郎:何で知らん女が電話出てんの!?それどころか何で俺を引き取りに来んの!?

キヨミ:しかも弟達が鍋心待ちにしてることも知ってたよ!?筒抜けだよ、盗聴とかされてるよ!?

翔太郎:何故だ、今夜鍋をやることは絶対極秘のはずなのに……!!

キヨミ:機密みたいに言うな!そんな隠すことでもないでしょう!

翔太郎:そうだ、次男は家にいるはずの次男は!?
    「兄ちゃん、ボク絶対二次元に入れる機械作るブヒ」が口癖の次男はどうなった!?

キヨミ:ダメなヤツだ!それを平泉成ボイスで聞きたくない!

翔太郎:ま、まさか次男、謎の女によって、キムチゾンビに!?

キヨミ:それは絶対無い!それだけは無いから落ち着こう!

翔太郎:そんで今頃次男の手によって、他の兄弟もキムチゾンビに!

キヨミ:妄想癖治そうよ!妄想癖と盗癖を治すべきだよ!

翔太郎:5股かけてる三男も、暴走族の四男も、毒蛇を飼い慣らしてる五男も!

キヨミ:ろくな奴いねぇな!そりゃそうか長男万引き常習犯だもんね!

翔太郎:ハッ!まさか五男の毒蛇が人間に変身!?

キヨミ:マジで落ち着こう!妄想通り越して物語が繰り広げられている!

翔太郎:どうしよう酋長、俺兄弟が心配だよ酋長!

キヨミ:うん、もう私は店長と呼ばれることを諦めるわ!
    落ち着いて、今は下手に外に出ると危ない!

翔太郎:そうか、今東京はエバラの触手に埋め尽くされてるから……。

キヨミ:いい加減落ち着けや!!謎の女と出くわすかもしれないから危ないの!
    とにかく、出入り口は封鎖したから、店内にいれば安全だから……。

(ドンドン、ドンドン!)

キヨミ:らぐっ!?

翔太郎:ふぇあっ!?

(すいません、万引きした音無翔太郎を引き取りに来ました!開けてください!)

翔太郎:ききき来たぞ一日署長ー!謎の女がドアを叩いてるぞ一日署長ーっ!

キヨミ:ななな何故!?従業員がバリケードを張り巡らせているはず!!

(安心してください、従業員は眠っているだけです!)

キヨミ:何してんの!?やばいよ、相手は武力を所持してるよ!!

(とにかく開けてください!従業員が二度と目覚めなくてもいいんですか!?)

キヨミ:怖ーいよぉーっ!!スタッフ一同の命が私に託されたよぉーっ!!

翔太郎:……あれ……?

(開けて、開けてください!ドンドン!サスサス、サスサスサス!)

翔太郎:……もしかして……機長、なぁ機長……。

キヨミ:すげぇドアさすってる……ちょ、どうしたの万引き少年……。

翔太郎:この声……母ちゃんかもしれない……!!

キヨミ:嘘ぉ!?え、マジで!?崖に落っこちてそれっきりだったお母ちゃん!?

翔太郎:ああ、この座敷わらしみたいな声、聞き覚えがある!

キヨミ:よくわかんないよ!座敷わらしの声とかイメージ出来ないよ!
    で、でもお母さんが生きてたんだとしたら、全てのつじつまが合う……。

翔太郎:あぁ……母ちゃんは睡眠ガス開発が趣味だったし……。

キヨミ:ろくでなしだ!!アンタらのデンジャラス遺伝子は母譲りだったんだ!!

翔太郎:だから、本当に母ちゃんだとしたら……会いたい……!!

キヨミ:……万引きクソ野郎……。

(サスサス、開けて、開けて翔太郎!サスサスペロペロ、ペロペロペロペロ!!)

キヨミ:めっちゃドア舐めてる……じゃ、じゃあ……開けていい……?

翔太郎:ああ……頼むよ、こども店長……!!

キヨミ:惜しい、余計なの付いた……じゃあ、開けるよ……!!

翔太郎:(ゴクリ)



(ガチャ)



キヨミ:………。

翔太郎:………。

みるく:(ダダッ)ハァハァ……何で万引きなんてしたの、翔太郎……!!

キヨミ:………。(チラリ)

翔太郎:………。(ニッコリ)

    ………誰だよ………。

キヨミ:誰だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――っ!!!!!
    お前は一体誰なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――――――っ!!!!!

翔太郎:知らねえよ、こんなヤツ知らねえよ……!!
    俺の母ちゃんはもっとピーター・アーツみたいな顔してんだよ……!!

キヨミ:パンチ効いてんな母ちゃん!ちょっと、誰!?アンタこいつの母ちゃんじゃないでしょ!?

みるく:アンタ何で万引きなんかしたの!高校生にもなって、恥ずかしくないの!?

キヨミ:こいつ全然話聞かないよーっ!!得体が全く知れないよーっ!!

みるく:高校生にもなって万引きだなんて……バカタレ!!(ばしーん)

翔太郎:ギャース!!(バターン)

キヨミ:ちょちょちょ!何殴ってんの!?知らない人が殴るとかもう通り魔の域だよ!?

みるく:どいてください、どいてください係長さん!!

キヨミ:アンタも店長って呼ばないのかよ!店長としての自信が喪失されてきたよ!!

みるく:言ってダメなら殴るしかないんです、これが音無家のやり方なんです!!

キヨミ:アンタ音無家の人間じゃないだろ!ただの喧嘩っぱやい不審者だよ!!
    てか万引き、大丈夫!?さっきぶん殴られてから倒れっぱだよ!?

翔太郎:へ、へへへ……!!あんなところに珍しい柄のカマキリが……!!(ブルブル)

キヨミ:恐怖のあまり幻覚を見てる!現実に戻ってきて、私を残して逃避しないで!?

翔太郎:ハッ、貴様エバラの回し者か!?ナメるな、東京は俺とカマキリが守る!!

キヨミ:しっかりしろぉ!!アンタがパニクってどうする、長男でしょ!?

翔太郎:ハッ!そうだ、俺が家計を支えないといけないんだ、毒蛇のエサ代を捻出しないといけないんだ!

キヨミ:それは五男にやらせろよ!アンタが支えてやる義務は無いよ!

翔太郎:ムリだよ、五男はまだ5歳だもん!

キヨミ:末恐ろしいな五男!?そんなことよりこの女だよ、アンタのこと知り尽くしてるよ!?

翔太郎:そ、そうだ!誰だお前、何で俺んちにいたんだよ!!

みるく:私情けないよ、何でこんな子になっちゃったのか……!!

キヨミ:相変わらず話聞かないな!もはや同じ人間なのかな!?

翔太郎:お前泥棒か!?それともストーカーか、まさかキムチゾンビか!?

みるく:万引きはれっきとした犯罪だって、ザビエルのくだりで習ったでしょ!?

キヨミ:同じ教育を受けてるよーっ!!同じ教科書を使ってるよーっ!!

翔太郎:大体何で来たんだよ、知らない人が来るとかオフ会じゃねぇんだから!!

みるく:そんなに万引きばっかしてると、エバラのマークにフランケンシュタインにされちゃうわよ!?

キヨミ:こいつ本当にお母さんじゃないの!?一致度が並々ならないんだけど!!

翔太郎:ていうか、次男はどうした!?家に引きこもってブヒブヒ言ってた次男はどうなった!?

みるく:………。

翔太郎:………。

キヨミ:………。

みるく:………。

翔太郎:………。

キヨミ:………。

みるく:………ニヤリ。

翔太郎:じなぁぁぁぁぁ――――――――――ん!!!
    じなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――ん!!!

キヨミ:お前何したぁーっ!!見ず知らずの次男に何やらかしたぁーっ!!!

みるく:次男は、私の中に生き続けています。

翔太郎:食べちゃったの!?お前次男食っちゃったの、そういう生き物なの!?

キヨミ:私は一体何を招き入れてしまったんだ!!何を呼び寄せてしまったんだ!!

翔太郎:次男……!!「三次元の女なんか全員泡吹いて倒れちまえばいいブヒ」が口癖の次男……!!

キヨミ:やべぇ、次男がゲスすぎて全然感情移入出来やしない!

みるく:まぁ、次男のことはいいじゃないですか。(にっこり)

キヨミ:よかないよ!アンタの不気味さを象徴するエピソードなんだよ!!

みるく:とにかく続きは家で話すから!本日は失礼しました!(がしっ)

翔太郎:捕まったー!!助けてアナウンス室長、食べられちゃうよアナウンス室長ぉーっ!!

キヨミ:ちょ、クソ野郎を離しなさい不審者!!私は何の味方なんだ!!

みるく:大丈夫ですよ……ただ……『教育』を施すだけなんで……!!(にっこり)

キヨミ:笑顔が恐怖しかないよーっ!!絶対洗脳みたいなことされるよー!!

みるく:とにかく早く帰るわよ!帰って三男以下を待ち伏……待たなきゃ!!(グイグイ)

翔太郎:待ち伏せって言いかけたよーっ!!助けて選手会長、音無家全滅しちゃうよーっ!!

キヨミ:店長ヒップアタック!!(どーん)

みるく:あんぎらっ!!(ばたーん)

翔太郎:!! マーケティング部長!!

キヨミ:そこから流れるような店長ホールド!!(がしっ)
    早く逃げなさい!!私がコイツに店長ホールドをぶちかましてる間に逃げなさい!!

翔太郎:こ、コートジボワール工場長……!!

キヨミ:もう私の肩書きどうなっちゃってんのよ!聞いたことない役職だよ!!良いから早く!

翔太郎:ブラジリアン柔術宣伝部長……でも……!!

みるく:(ジタバタ)
    ちょ、離してください!アナタも私の中で生き続けたいんですか!?

キヨミ:めっちゃ怖い!!いいから早く!餞別としてキムチ鍋の材料持ってきな!

翔太郎:あ、ありがとうクラリネット&トロンボーン長!絶対美味しいキムチ鍋を作るからな!!!(ダッ)

キヨミ:知らんわ!あと最後くらい店長って呼んでいけや!!

みるく:ま、待ちなさい今夜の晩飯、間違った翔太郎!!
     ……。

キヨミ:さーて、絶対離さないからね……今すぐ店長シャイニングウィザードを喰らわせて……!!

みるく:必殺!麻酔針エルボー!(どしゅっ)

キヨミ:ぐへあ!か、体が痺れて……!!

みるく:どうです、動けないでしょう?五男の毒蛇の毒を塗ったんですよ。

キヨミ:い、いつそんなのを仕込む時間があったんだ……。
    今に見てなさい、私を食ったとしても本社からフロアマネージャーが……!!

みるく:フッ、安心してください……アナタも次男も食べたりしませんよ……。

キヨミ:ハ……!?じゃ、じゃあ次男は一体……!!

みるく:必殺!!眠り薬エルボー!!(ドシュッ)

キヨミ:ぐへあ!!ど、どんだけ肘に針仕込んでんだ……!!ね、眠い……!!

みるく:安心してください、1時間ほどで目覚めます……。
    それまで雪印乳業のロゴにキャタピラが生える夢でも見ていてください……。

キヨミ:ど、どんな夢や……ねーん……!!(がくっ)

みるく:ふぅ……やりすぎちゃったかな……驚かせるだけのつもりだったけど……。

キヨミ:(泡吹いて気絶)

みるく:……まぁいいか、後でフォローすればいいし、どうせ三次元の女だしな……。
    それにせっかく好きな姿に変身する発明が出来たんだから、遊ばなきゃ損だよな……。
    よーっし!今度は絶対二次元に飛び込める発明を作るブヒーっ!!

 


  NO.15                   四谷千秋 & スオムスいらん子中隊 with 十時あかり

 

「そして灰になる」

冬馬「今日は念願の合コンです! 数少ない男友達に女としてのプライドをジャイアントスイングで擲(なげう)った土下座を披露し、やっと漕ぎ着けた5対5の合コンですから!
   道行く人たちがわたしの絶叫を耳にして含み笑いをして去っていきますが、笑いごっちゃないのですよ!
   見てごらんなさいな、今日のわたしの気合いの入ったファッション!
   お化粧も決して派手にせずわたし自身の持つ素材を生かしつつ、アイラインや唇を際立たせるこっそりばっちりメイク!
   そしてこれだけ喋っててもLC-杯規定ではまだ1行分にしかカウントされていない事実! 哀しいけれど……これが現実なんですよね!
   というわけで、誰かこの待ち合わせ場所のド定番渋谷ハチ公前に早く来てくださーーーい!」

千秋「おーい!」

冬馬「おっ、さっそく来てくださいましたね。わたしを守護する4人の『わたしよりは可愛くないけど決して平均点以下ではない系女子』の内の1人……四谷千秋さん!」

千秋「いやあ、ちょっと早く来すぎたくらいかなあと思ったけど、お前早いなあ」

冬馬「当然! 有給取って7時間前から待ってました!」

千秋「そんな不毛な時間に給料出してたって知ったら、会社の経理泣くぞ!」

冬馬「ところで千秋さん! そろそろツッコんでいいですかね!?」

千秋「ん? なんだよ。アタシはお前と違ってフリーターだから、その融通が利いて……」

冬馬「いえ、平日の夕方という社会人にはやや厳しめの時間帯にどうしてこうも颯爽と現れることができたのかとか、そういうことを聞きたいわけじゃなくてですね」

千秋「うん」

冬馬「なんで軍服なんです」

千秋「え」

冬馬「なんで軍服なんですか」

千秋「なんでと言われても」

冬馬「いや、そりゃアーミースタイルとかいうファッションがあるのは知ってますよ。わたしも日々JJとか女性自身を読んでファッションを研究してますから」

千秋「女性自身はスキャンダル雑誌だけどな」

冬馬「だけれど千秋さん……あなたのスタイルは、アーミースタイルと言い捨てるには、ガチ過ぎます!
   上も下も軍服なのはともかく、ヘルメットまで被っちゃって! 田舎の自転車登校ですか!?」

千秋「いや、田舎の学校ではチャリ通する生徒にヘルメット着用が義務付けられてるとか知らんけど」

冬馬「しかもそのヘルメットには草とか木をくっ付けて顔も緑や茶色に塗って……この緑の無い開発されきった渋谷駅前では逆に目立ちますって!
   そういうのはアマゾンとかジャングルでやることですからね!?」

千秋「コンクリートジャングルって言うじゃんか」

冬馬「コンクリートって言ってるじゃないですか!
   で、これはツッコむべきかどうか迷うんですけどね……なんでライフル持ってるんですか!」

千秋「これはライフルではない。三八式歩兵銃だ」

冬馬「ライフルですよね!? なんですか、その『マッキントッシュはパソコンではない』とか言っちゃうマック信者みたいな反論!?」

千秋「安心しろ。これは模造品だ。実弾は出ない」

冬馬「でしょうね! 未だに三八式が現役なの、ネパールくらいですからね!」

千秋「ただしBB弾は出る」

(バラララララララララ)

冬馬「わあああああああ何してんですか千秋さん! ここ渋谷ハチ公前ですよ!?」

千秋「安心せい、峰打ちじゃ」

冬馬「BB弾に峰打ちなんて概念ありませんよね!?
   ていうか千秋さん! なんで軍服なんですか! 今日わたし、合コンですって言いましたよね!?」

千秋「え?」

冬馬「え?」

千秋「……『千秋さん。今度の金曜日の夕方、戦場に行きませんか?』って……言われたけど……」

冬馬「……」

千秋「……」

冬馬「……い、言った、かも……」

千秋「……」

冬馬「だからといって、軍服完全装備で来なくとも!」

千秋「サバゲーの誘いかと思ったんじゃ!」

冬馬「だとしても軍服に着替えるのは現地フィールドに着いてからですからね!? 一般の街中からそういう格好しているの、マナー違反ですからね!?」

千秋「オーマイ……。なんてこった。つーこたアタシはこれから、こんな軍オタ丸出しの格好で男に会わなきゃならんのか……」

冬馬「せめてそこを羞恥してくれる人で安心しました」

千秋「どうしよう……」

冬馬「うーん、まあ、まだ集合時間まで時間がありますから。そこのユニクロで適当に服を見繕って来たらどうですか?」

千秋「そ、そうするわ……す、すまんな」

冬馬「いえ。では行ってらっしゃい」



冬馬「ふう……一時はどうなることかと思いましたが……あの軍人娘にもちゃんとした一般常識があってよかったですよ……」

歌姫「おーい、冬馬さーん! ごきげんよう!」

冬馬「ああ、歌姫さん。ごきげんよう!」

歌姫「渋谷は相変わらず人が多くて嫌ですわ。
   わたくしのセレブリティな雰囲気がそうさせるのかもしれませんけれど、さっきから人がちらちら見てきて、鬱陶しくてかないませんことよ」

冬馬「ええ。ところで歌姫さん。ひとつ聞いてもよろしいですか?」

歌姫「よろしくてよ」

冬馬「では。……なんで、無人島から命からがら帰還した人みたいな格好してらっしゃるんですか?」

歌姫「え? このぼろ布みたいなののことを言ってるんですの?」

冬馬「自分で自分の着てるののことを『ぼろ布みたい』って言っちゃったよこの人! ええそうですよ! そのぼろ布みたいなののことですよ!
   あなたさっき自分のセレブリティな雰囲気のせいで人に見られる的なこと言ってましたけど、明らかに原因それですよ! セレブリティと真逆を行くそのファッションのせいですよ!」

歌姫「まぁ! この格好の何がおかしいというのでしょう。発展途上の国々ではよく見かけるファッションでしてよ」

冬馬「そりゃあ発展途上の国なら目立たないでしょうけど、あいにくここは日本ですので!
   ブラジル以外の場所でサンバの格好見かけたら、やっぱり浮くでしょう!」

歌姫「冬馬さん……なにもブラジルでは常時サンバカーニバルをしているわけではありませんのよ……?」

冬馬「知ってますよ!」

歌姫「それにこの格好も、決して悪いことばかりではなくてよ? 涼しいですし」

冬馬「もうすぐ冬も本格化してくる季節だってぇいいのに!」

歌姫「道行く方がお金をくださいますし」

冬馬「同情されている!?」

歌姫「同情するなら金をくれですわ!」

冬馬「くれてんですよ! くれてんですよ!
   ていうか……えっ、なんでそんなことになってるんですか歌姫さん!? 歌姫さん、曲がりなりにもお嬢様でしょう!?」

歌姫「曲がらずもお嬢様ですわ!」

冬馬「だとしたら、余計なんでそんなぼろ布みたいなの……」

歌姫「えっ? だって先日冬馬さんが仰ったんじゃありませんの」

冬馬「えっ、わたし言いました? わたし、『合コン行きませんか? 合コン知らない? ……えーと、まぁ、パーティみたいなものです』としか……」

歌姫「いえ、その後に確か『あ、でもパーティだからといって、フォーマルな格好をしなくてもいいですからね』と……」

冬馬「……言った、かも」

歌姫「でしょう」

冬馬「だとしても、いくらなんでもこの格差はありませんよね!?」

歌姫「わたくしお嬢様です故、フォーマルじゃない格好がよく分からなかったんですの」

冬馬「カジュアルという概念!」

歌姫「ですのでメイドに『合コンというものに参加するので、衣装を用意なさいな。あ、フォーマルじゃなくてよろしくてよ』と伝えたら、メイドがニヤニヤ笑いながら渡してきたのがこれでしたの」

冬馬「ニヤニヤ笑われながらな時点である程度察してくださいよ!」

歌姫「どうしましょう。ということはこの格好はおかしいんですのね……?」

冬馬「ああ、もう! じゃあその変なのを自覚できたんなら幸いです。そこに無印良品がありますから、適当に良さげなのをチョイスしてきてください。
   あそこなら全部が全部無難ですから、目ぇつぶって適当にカゴに投入して買って来ても、そこそこ見れるファッションになりますからね」

歌姫「わ、わかりましたわ……。では、行って参りますわね」



冬馬「はあ、2人目を迎えるだけで、もう結構疲れてしまいましたよ……」

学美「おーい! 冬馬さーん!」

冬馬「おやおや、学美さん!」

学美「いやー、家を出る時は5時間ほど遅刻するかと思って焦ったんですけど、20分も前につくことができてよかったですよー」

冬馬「時間配分!?」

学美「いやー、それにしても合コン楽しみですねー。あたし、合コン初めてだから、緊張しますよー」

冬馬「あ、そうなんですか……。
   ……ええと、もうツッコんでいいですかね。わたしもうこのやりとりやるの疲れてきましたよ」

学美「なんですか?」

冬馬「学美さん。……なんで、尼さんの格好をしているんですか!?」

学美「出家しました」

冬馬「寝耳に水ですよ! いつですか!?」

学美「冬馬さんが合コンのお誘いの電話をかけてくる直前くらいにです」

冬馬「えええええええ凄いタイミングで誘っちゃいましたねわたし!?」

学美「明日にでも悟りたいと思います」

冬馬「そんな気軽なもんじゃあありませんからね!? なんかこう、すごい、修行とかいっぱいしてようやく悟れるような世界なんですからね!?」

学美「でも表参道で出家のスカウトされた時は、」

冬馬「出家ってスカウトされるものなんですか!? 表参道で!?」

学美「『お金は一切かからないよ。みんな悟ってるし、悟ったら気持ちいいよ』って」

冬馬「誘い文句が完全にアレと一緒じゃないですか!」

学美「シャルウィダンスですか?」

冬馬「社交ダンスのお誘いはそんなんじゃないです!
   ていうか、ですね。学美さん、尼さん……なんですよね?」

学美「アーメン」

冬馬「違います。
   尼さんだったら……その、合コンとかでチャラチャラ遊んじゃってて、いいんですか……?」

学美「尼さんが合コンでチャラチャラ遊ぶことに、なにか問題でも?」

冬馬「いや、それを尼さんが言っちゃうことの問題をもっと自覚して下さいよ!
   尼さんっていうのはですね……結婚することができないんですよ?で、合コンっていうのは、その、まあ、別にそれのみが目的だというわけでは決して無いんですけれど、
   一般的なイメージとしてですね、異性の交際相手を見つける場所であると認識されているわけでして……」

学美「……?」

冬馬「あれっ。理解されてない!? まあ、とにかく尼さんの格好で合コンに来られると、ちょっぴり迷惑な感がなきにしもあらずなんですよねえ!」

学美「……?」

冬馬「こんなに噛み砕いているのに! あー、もういいです! あなた本人が尼さん的にどうなっちゃうのかとかは考えるのが面倒ですしあなたの問題なので、もう無視します!
   とりあえずそこの東急ハンズで適当に着れそうなの見繕って来て下さい」

学美「はーい」



冬馬「さて、後は女子側の面子は残すは一人だけとなりましたが……」

あかり「やっほーーー! とーまちゃーん!」

冬馬「ああ、どうも。あかりちゃん……」

あかり「今日はぁ、あかりをぉ、合コンに呼んでくれてぇ……ありがとサンキュ☆」

冬馬「ああ、はい……」

あかり「……」

冬馬「……」

あかり「……?」

冬馬「ボケろよ」

あかり「えっ」

冬馬「ここまで3人が3人だったから、もう最後のあかりちゃんもボケて来るかなって思ってたんですよ」

あかり「えっ、えっ」

冬馬「それなのに、なに、普通に可愛い格好して来てるんですか!?」

あかり「えええええっ!? なんで!? なんであかり、普通に可愛い格好して来て怒られてるのおおおおおお!?」

冬馬「もっとあったでしょう! なんかこう、全裸とか!」

あかり「社会的にあかり死んじゃうよおおおおお! そしてそれを後悔して自殺をして、肉体的にも死んじゃう流れだよおおおおおお!」

冬馬「なんなんですかその気取ったストール!? 引きちぎりますよ!?」

あかり「なんでなのおおおおお!? 気取ってないよ、これからちょっと肌寒くなってくるし、別にこういうのしてても普通だよね!? ねえ!?」

冬馬「もっと軍服とかぼろ布みたいな服とか尼さんの格好とか、あったでしょう!」

あかり「無いよ! まず持ってないし、ゆえに選択肢にも無いよ! 持っててもたぶん、無いよ!」

冬馬「こんなつまらない発想しか持たない方を合コンに誘っていただなんて……失望しました!」

あかり「えええええ、なんでええええええええええ!!!!?」

冬馬「あかりちゃんの友達やめます!」

あかり「そこまでひどいことしたかなあああああ、あかりいいいいい!? ええええ、友達やめるくらいひどいことしたかああああああ、あかりいいいい!?
    わ、わかったよ……そ、そんなまで言われるんだったら……あかり、……し、下着姿になるよ!」

冬馬「さっき全裸とか言った流れからして、今更下着姿なんか来たってインパクト不足ですよ!」

あかり「そんなあああああああ! 下着姿でもあかりにとってはそこそこ一大決心だったのにいいいいいい!」

冬馬「はあ、まあ、いいでしょう。ちょっと期待とかしちゃってたわたしがバカだったというだけの話ですから」

あかり「やめてえええええ! 期待はずれ感出すのやめてええええええ! 勝手に期待しといて期待はずれ感出すのだけはやめてええええ!」

冬馬「じゃあ、まあ、とりあえずこのまま男性陣の到着を待って」

あかり「待ってえええええ! 15分! いや、5分でいい! ……ワンチャンスください!」

冬馬「はあ?」

あかり「別の服に着替えてきます!」

冬馬「いや、別にいいですけど。そんなん」

あかり「冬馬さんにとっては、そんなんでしょうけど……あかりにとっては……あかりにとっては……プライドのかかった大勝負なのおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

冬馬「あ、あかりさん! ……い、行ってしまった……。……ドトールコーヒーに……。あそこでどうやって衣装を調達するつもりなんですかねえ……?」



冬馬「……で、約束の時間になっても、まだ誰も戻って来てないし! どういうことなの!」

男子A「おい、冬馬。他の子たちはどうしたんだよ?」

男子B「」(※マネキンを使用しています)

男子C「」(※マネキンを使用しています)

男子D「」(※マネキンを使用しています)

男子E「」(※ダビデ像を使用しています)

冬馬「え、ええと……ええと……」

千秋「待たせたな」

冬馬「おおっ、千秋さ……えええええっ!? なんですかそのシャレオッティなお洋服は!?」

千秋「ユニクロで適当に見繕って来た」

冬馬「さっすが天下のユニクロ! 陸軍女が適当に見繕っただけで、こんなにシャレオッティな今風のオンナノコになっちゃうんですね!」

歌姫「お待たせですの」

冬馬「おおっ、歌姫さ……えええええっ!? なんですかそのシックで落ち着いた感じのいいお洋服は!?」

歌姫「無印良品で適当に見繕って来ましたわ」

冬馬「さっすが天下の無印良品! ファッションセンス皆無お嬢様が適当に見繕っただけで、こんなに落ち着いた感じの清楚お嬢様みたいになっちゃうんですね!」

学美「お待たせしました」

冬馬「おおっ、学美ちゃ……えええええっ!? なんですかその『ポパイ』とか書いてあるTシャツ!?」

学美「東急ハンズで適当に見繕って来ました」

冬馬「さっすが天下の東急ハンズ! わけわかんない尼さんが買いに行けば、同様にわけわかんないグッズを提供してくれるってわけですね!」

あかり「お待たせしました!」

冬馬「おおっ、あかりさ……げっ……」

あかり「ど、どうですか……?」

冬馬「……」

千秋「……」

歌姫「……」

学美「……」

男子A「……」

男子B「」(※マネキンを使用しています)

男子C「」(※マネキンを使用しています)

男子D「」(※マネキンを使用しています)

男子E「」(※ダビデ像を使用しています)

冬馬「あ、あかりさん……。その……ふ、服は……?」

あかり「……さ、さすがにドトールコーヒーにはお洋服置いてなくて……そ、それで……」

冬馬「……」(ドン引き)

千秋「……」(ドン引き)

歌姫「……」(ドン引き)

学美「……」(ドン引き)

男子A「……」(ドン引き)

男子B「」(※マネキンを使用しています)

男子C「」(※マネキンを使用しています)

男子D「」(※マネキンを使用しています)

男子E「」(※ダビデ像を使用しています)

あかり「……と、冬馬さんが、全裸で来いって……言ったから……」

冬馬「ふぁっ!!!!?」

千秋「お、おいマジかよ冬馬……」(ドン引き)

歌姫「鬼畜ですわ……」(ドン引き)

学美「コレラ菌以下ですね……」(ドン引き)

男子A「おい、冬馬お前……。あかりさん、と、言うのかな? ええと、これ、俺のコートとりあえず羽織って……」(ドン引き)

男子B〜D「」(※マネキンを使用しています)

男子E「」(※ダビデ像を使用しています)

冬馬「えへへへへへへへへ……うわーい、本当に言っちゃってたから言い訳不可能ー。あたしの社会的地位陥落ー。この合コンも失敗不可避ー。
   あははは、もう後は野となれ山となれですよー。あ、チョウチョが見える。おーい、待ってよー……」



【後日談】

この合コンで、カップルは4組成立したそうである。
内訳としては多くは語らないけれど、軍ヲタをこじらせたカップルと、良家のお嬢様と御曹司のカップル、ポパイトークを会合中ずっとしていたカップル、そして「コートありがとうございました……」「いや、いいんだ……」「あの、……メールアドレス。教えてもらえませんか?」から交際がスタートしたカップル。
そして。

五島冬馬は、後に何処へかへと失踪した。

 


  NO.16                   天体観測

 

「強盗」

  翔:いらっしゃいませー! ありがとうございましたー!

   

   ふぅ……競馬やマージャンなどのギャンブルから足を洗ってもう10年か

 

   昔は競馬でとか楽してお金が入らないかぁとか思ってたんだけどね

 

   大学を卒業して真面目に就職して、今ではこうして自他共に認める立派な銀行の支店長

 

   今では仕事が生きがいなんだよね。あー、今日も平和だなー

 

 

 

(ういーん)

 

 

 

ミヤ:か、か、か、か、か、か、カニを出せ!

  翔:いきなり強盗来た!? しかも緊張しすぎて噛んでるし!

ミヤ:は、早く、こ、こ、このカバンにいっぱいのか、か、か、カニを入れるんだ!

  翔:いつまで噛んどんねん

ミヤ:タラバでもいいし、ズワイでもいいから早く入れるんだ!

  翔:本当にカニを要求してたのかよ

ミヤ:さっさとしないとこの鋭く尖ったゴボウで刺すわよ!

 翔:頭の中がパラダイスなお客様ご来店したぞー。たぶん悪い病気を患ってるぞー

ミヤ:あなたの股間とは比べ物にならないくらい堅いゴボウよ!

 翔:救急車1台と木刀持ってきてー。こいつ殴るから

ミヤ:ちなみにゴボウは酢水につけておくと歯ごたえが良くなるのよ!

 翔:役に立つトリビアをありがとう。大至急、救急車ー

ミヤ:待て待て。私の武器がゴボウだけだと思ってもらっては困る

 翔:何!? 日本刀か!? はたまた銃か!?

ミヤ:私の最大の武器は寿命半分を引き換えに死神に交換してもらったこの眼よ!

 翔:超えてはいけないライン超えよったで

ミヤ:さすがに寿命半分は悩んだわ! それでも……それでも私はカニが欲しかった!

 翔:市場に行けよ

ミヤ:ふふふ。死神の目を手に入れることによって私はアンタの個人情報が手に取るように分かるのよ!

 翔:小畑健、大場つぐみ両先生、本当に申し訳ございません

ミヤ:さて、まずはアンタの名前を調べさせてもらうわ

 翔:ま、まさか本当にわかってしまうのか!?

ミヤ:チョロチンテン3世……か

 翔:にせものやん

ミヤ:父チョロチンテン2世 母トッピロキーモンステン 

 翔:今すぐその眼返してこいや

ミヤ:祖父チョロチンテン1世 祖母よね子

 翔:なんで祖母だけ正解なんだよ。びっくりするわ

ミヤ:ふふふ。悪魔の目の効果に驚いたか!

 翔:死神じゃなかったのかよ。ちょくちょく脳内設定変えるなよ

ミヤ:次はアンタの寿命を調べさせてもらうわ

 翔:そろそろ眠たくなってきたよ

ミヤ:え〜と……いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……?

 翔:いくつまで生きるんだオレは

ミヤ:うんと……24歳ね

 翔:だいぶはしょったな。オレ今32だぞ

ミヤ:これだけあればアンタを殺すなんて簡単なことよ!

 翔:どんだけポジティブなんだよ

   大体、デスノートの真似するなら肝心のノートが無いじゃない

ミヤ:家計簿なら持ち歩いているんだけど……

 翔:エンゲル係数でも計算しとけや

ミヤ:誰がエンジェルよ! 確かに私は可愛いけど!

 翔:都合の良い耳してるな

ミヤ:え? 私のスリーサイズ?

 翔:聞いてへん。聞いてへん

ミヤ:16−25−41よ!

 翔:何の数字だそれ

ミヤ:犬に噛まれた回数、USBメモリを無くした回数、鬼に出会った回数よ

 翔:3個目について詳しく

ミヤ:私がプロレスを見に行くといつもいるのよ!

 翔:それ鬼じゃねぇよ。きっと獣神サンダーライガーだよ

ミヤ:え? 私の初恋ですか?

 翔:だから聞いてねぇよ。何のインタビューだこれ

ミヤ:初恋は中1の時で〜、相手は鬼でした

 翔:2個目について詳しく

ミヤ:私が大相撲を見に行くといつもいるのよ!

 翔:だから鬼じゃねぇって。きっと曙太郎だって。大体お前は鬼を何だと思っているんだ

ミヤ:顔が怖くて面白い人

 翔:訴訟されたら負けるからな

ミヤ:さぁ、そろそろ本題に戻るけどカニを出しなさい!

 翔:今日まだ1回も本題に入ってねぇよ

   大体、なんでカニなんて欲しいの?

ミヤ:実は……私には病気の父がいて、もう長くはないの。ちんこが

 翔:一瞬でも同情した自分をしばきたい

ミヤ:そんな父が病院のベッドでこう言うの

   「おいしい……おいしいカニが食べたい」って

 翔:入院先、高須クリニックだろ

ミヤ:しかし……私にはお金が無かった! お金が無いからカニを買うことが出来なかったのよ!

 翔:海に獲りに行くという発想はなかったもんかね

ミヤ:その時に私はひらめいた

   「……カニを手に入れるために、カニ強盗をしよう……」と

 翔:あのさ、あなた一応銀行強盗でしょ?

ミヤ:そうよ。それが一体どうしたのよ?

 翔:ならさ、銀行強盗らしくお金を盗もうとはしなかったの? その盗んだお金でカニを買えばよかったじゃない

ミヤ:いやいやいや。私、犯罪はちょっと……

 翔:カニ強盗も十分犯罪だぞ。しかもカニのほうが遥かに相手にストレスを与える

ミヤ:犯罪なの!? お茶目ないたずらじゃなくて?

 翔:こいつの思考回路かち割って見てみたいわぁ

ミヤ:じゃあ、ちょっと待ってて……

 翔:……?

ミヤ:強盗よ! おとなしく金を出しな! 

 翔:こいつ仕切り直しやがった

ミヤ:さぁ、このバッグに入るだけのお札を用意しなさい! さもなければあなたの命はないわ! こっちには武器もあるのよ!

 翔:お前、ゴボウと家計簿しか持ってないぞ

ミヤ:地獄の使者からもらった眼もあるわ!

 翔:また設定変わってる。言っとくけどその眼に攻撃性はないからな

ミヤ:アンタの寿命と名前と住所と電話番号がわかるのよ!?

 翔:ダイレクトメール送ってきたらしばくからな

ミヤ:それに私は格闘技も習ってるのよ!? 柔道、剣道、空手にテコンドー! 全て資料請求済み!

 翔:通信教育かよ。しかもまだはじめてないし

ミヤ:更には炊事、洗濯、掃除! お茶に華道に日本舞踊!

 翔:花嫁修業だね。貰い手いないと思うけど

ミヤ:全てを総合力を合わせると戦闘力は53万!

 翔:こいつフリーザ様と同格なのかよ。そのゴボウと一緒にキンピラにするぞ

ミヤ:……お願い! カニが必要なの! もう私には行くところがないのよ!

 翔:ちなみにここの隣スーパーなんだけどね

ミヤ:さっきも言ったでしょ! 私にはお金が無いの! カニを買うお金なんて無いのよ!

 翔:働けよ。人の3倍働きなさい

ミヤ:父の看病で働く時間なんて……

 翔:お前の親父、ただ一皮剥けようとしてるだけやん。年甲斐もなく

ミヤ:ちなみに病気が治ったらソープランドに行きたいって言ってたわ

 翔:病室ごと燃やしたろか。本当に訳のわからん親子だなぁ

ミヤ:父の悪口はいくら言ってもいい! でも……でも私の悪口は絶対に言わないで!

 翔:逆や逆。自分大好きか

ミヤ:もっと私を褒めて!

 翔:断る。あと褒めるところが今の段階では見当たらない

ミヤ:もちろん、父にだっていいところはたくさんあるわ

 翔:ようし、話半分で聞いてやろうじゃないか

ミヤ:まずはとても明るいところね。それはそれはまぶしい太陽みたいな人よ。性格も頭も

 翔:最後の一言余計だよね。どう考えても余計だよね

ミヤ:もはやズルむけ

 翔:股間はズルむけじゃないのにね

ミヤ:そしてとても素早い人だったわ。すぐに木に登れるのが特技だったようね

 翔:ネコかよ

ミヤ:怖い顔のおじさんが家に来たときもそれはそれは神業のようなスピードで家の前にある木に登っていたわ

 翔:借金取りから逃げ回る際に身に付けたスキルだね。世の中、どう転ぶかわからないもんだね

ミヤ:お父さん、こう言っていた

   「お父さんはな、木に登るのも早いけど、夜のほうも早いんだぜ」って

 翔:死ね。会ったことないけど死ね

ミヤ:……私は昔、いじめられていたの……

 翔:いきなりどうした

ミヤ:毎日毎日泣きながら家に帰っていた……そんな私を父は笑顔で出迎えてくれたのよ

 翔:専業主夫かな? 無職かな? それによってだいぶ話は変わってくるんだけど

ミヤ:毎日働いていたわ

   毎朝「よーし、今日こそ海物語でまりんちゃんの顔を見に行くぞー!」って息巻いていたもの   

 翔:無職な。お前の親父、無職な

ミヤ:そして父は満面の笑顔で泣き顔の私に向かってこう言うの

   「ごめん!1000円! 1000円だけでいいから貸して!」って

 翔:お前の親父サイテーな。ワースト親父大賞があったら文句なしで受賞な

ミヤ:そして私の貯金箱からお金を抜くの。そのスピードの速いこと速いこと

 翔:そこでも素早さが生かされていたか

ミヤ:そんな父のおかげで私はここまで生きてこられたわ……ありがとう。お父さん

 翔:本人に直接言ってあげなさいよ

ミヤ:そしてカニを譲ってくれる見ず知らずのおじさん……ありがとう

 翔:あれ? もしかしてそれってオレの事かな? 譲らないよ?

ミヤ:松葉ガニ……父と大事に食べます!

 翔:サラッと高いカニを言ったよね。鳥取県でしか食べられない高級カニの名前を出したよね

ミヤ:炊き込みご飯にもしたいのでお米もくれると嬉しいのですが

 翔:そろそろ黙ろうか。警察呼ぶよ?

ミヤ:くっ! あぁもう! さっさとカネでもカニでもカナでもカヌでもカノでもいいから出しなさい!

 翔:おぉ、ナ行が揃った。言語として成立はしてないが。カヌて

ミヤ:さぁ、早くしなさい! 私が本当にキレる前に言うこと聞いたほうがいいわよ?

 翔:もうすでにある意味頭キレてますよ

   ……あのね? 人のお金でお父さんが手術して喜ぶとでも思ってるの? 実の娘が強盗してるなんて知ったら落ち込むよ?

ミヤ:そ、それは……

 翔:あなたのお父さん、もっとしてもらいたい事がたくさんあるんじゃないかな

ミヤ:……

 翔:今日の出来事は見なかったことにしてあげるから帰りなさい。ちゃんと働きなさい

   あと、出来れば病院で頭の検査とかしてもらいなさい

ミヤ:……そうですね。私が間違っていました。今日のところは帰ります……

 翔:わかってくれれば結構。じゃあね、包茎短小のお父さんによろしく

ミヤ:はい……さよなら、鬼に似た人

 翔:誰の顔が怖くて面白い人じゃ

 

ミヤ退場。暗転。しばらくして明転

 

 翔:ふぅ。変な強盗騒ぎから1週間か。あれからは特に事件もなく平和だなー

 

(うぃーん)

 

ミヤ:か、か、か、か、か、か、カニを出せ!

 翔:また来たの!? 今度の目的は何!?

ミヤ:母が豊胸手術を受けたいと……

 翔:よっしゃ。おめえの両親をカニで殴ってくるわ!


 

哲夫

スラガラ

KK

夏草

オフィユカス

田んぼマン

山下銃

合計

43

82

77

63

57

73

58

66

519

〇24歳で合ってるだろいい加減にしろ!!

ミヤがちょいちょいぶっこんでくる下ネタが浮いている印象です。
また登場するワードが突発的(犬に噛まれた・USB・フリーザ等)で
面白さよりかは置いてけぼりを喰らった感じが強かったです。
ワード自体に面白味が無いというのも残念です。
掛け合いこそコミカルなのでそういう良さを活かしたボケにできないものでしょうか。

なんだキミら、週末こんなことして遊んでるんか?ん?
花嫁の貰い手は翔くん、キミだ!!!!!

〇好きなフレーズ
・顔が怖くて面白い人
・「ごめん!1000円! 1000円だけでいいから貸して!」って


まず全体のネタをざっと見て書いたメモに「テンポはピカイチ、チンコは余計」とだけ書いてあったんでこれでいいかなとも思ったんですけども
とにかくボケが分かりやすくてツッコミが端的で正統派の強みを見た感じでした
その分アクが少ないので他の強烈なインパクトのコントと比べるとこのくらいの点数に収まっちゃうかなあ、と。そのためのチンコって訳でもない感じでした

〇大当たりボケも正直なかったですが、外しボケもなし。
ロングコント杯の傾向として、フリ期間を長めにとったり、ちょっと考え過ぎかなというコントも多少ある中、
即効性のあるボケとツッコミでホッとする、最高に褒める意味で「普通のコント」でした。

〇入りがリアルすぎるねんて。
展開で緩急をつけるネタというよりは、マシンガンのようにボケて勢いで引き込んでいくタイプのネタだったのではないかと。
それを冷静に交わすツッコミも心地よくてよかったのですが、全体的に盛り上がりどころが少なかったのが残念。
こういったネタは徐々に威力増していくようなボケが必要になると思うんですが、全体的に同等の盛り上がり方のネタだったので物足りなく感じました。
翔さんらしい体当たりのボケが多かったので、もっと練ってみたりところどころ思い切ったボケをぶち込んでスパイス効かせてもよかったのではと思います。

〇前半は面白かったんだけど後半の安易な下ネタがぶち壊してる印象。
「私の悪口は言わないでー」とか超ベタで一気に現実に戻された感じ。
あと全体的にトロイデっぽい。褒めてねぇぞ

〇ボケもツッコミもバカバカしくて好きですねw
ただ、最初のミヤさんの中二病ボケがもっと広げ用があったのに中盤以降は全く出てこなかったんで、
そこをもっと掘り下げてもいいんじゃないですかね。

〇カニは、面白いですよね。(迫真)
それはそれとして、最初の独白の無意味さは何なんでしょう。僕の頭の中では、ミヤさんは未来から来ていて、翔君が実はミヤさんの父親、みたいな展開が来るための伏線だと思っていました。そんなことありませんでしたな……。
ツッコミの感じが良いですねえ。「無職な、お前の親父無職な」とか、凄く翔君の声で再生されるんだー。

 


 NO.17                   メリースリー

 

「想像旅行・改」

ケイ:……んにゃ〜…。

シン:……暇〜…。

キミ:…そうだなぁ。

シン:台所に何か食い物あるぅ〜…?

キミ:腐ったカボスのような味のする白飯ならあるぞ〜…。

シン:腐ったカボス食った事あるのかよ〜…。

キミ:貧乏人の食の幅広さなめんなよ〜…。

ケイ:ぱぱ〜…どこかいこうよぉ〜。

キミ:んなこと言っても、金ねぇよ〜…。

シン:母さんに慰謝料払ってスッカラカンだもんねぇ…。

キミ:畜生、かおる子の奴め。俺の少ない財産掠め取りやがって…。

ケイ:ぱぱがうわきしたからじゃないのぉ〜?

キミ:うるせぇ。

シン:しかも財産って言っても大事に育ててたシオマネキの大群売っぱらった金だけじゃん。

キミ:うるせぇ。

ケイ:しおまねこちゃん、だれかにかわれたかなぁ。

キミ:…マネ子…。一番大事に育ててたのに…。

シン:カニへの未練のほうが強いのかよ。

ケイ:ねぇ〜…。ちかくでもいいからどこかいこうよぉ〜…。

キミ:…よし、想像旅行をするぞ。

シン:またぁ?それ先週もやったじゃんか。

キミ:金のないときはこれに限るんだよ。この方法でどこでもいけるんだぞ?

シン:ん〜…。ケイはどうする?

ケイ:いいけど、もうきょうとはやだぁ〜…やつはしたべあきた〜…。

シン:だとさ。今日は行ったことのないところにしようぜ。

キミ:じゃあ…北海道にしようか。

ケイ:さんせーい!!ほたて、ほたてー!!

シン:俺もいいぜ。スキーやりたいしな。

キミ:じゃあ…(ガサガサバサバサ)
   「冬の北海道!!ゲレンデスキー&食べ歩きツアー!!」…よし、この設定で行くぞ。

シン:ちゃんとJTBのチラシ片付けとけよ。

キミ:よーし、じゃあ二人とも目を閉じろ。


(3人とも、目を閉じる)




キミ:…ん〜、北海道の空気はうまいなぁ!

シン:そうだね、父さん。

ケイ:あー!!しろいこいびと!!しろいこいびと!!

キミ:はっはっは。こらこらケイ、土産販売コーナーで早速はしゃいでどうするんだ。

ケイ:いただきまーす!!がしゃばりばりぶりめりぶち。

キミ:はっはっは。こらこらケイ。包装ごと食べるんじゃない。パパのようにいくらをパンツにつめなさい。

シン:あ、警察が来た。


ケイ:ふぁんふぁんふぁんふぁん。


キミ:もぐもぐ。おい、網走刑務所の臭い飯はバター味だぞ。斬新だな。



シン:(パンパンパン)



(3人とも、目を開ける)


キミ:おい、何するんだよ。序盤から3回の手打ちをするなよ。それは目を開ける時の合図だろうが。

シン:だからこそ合図をしたんだよ。また京都のときと同じパターンだろうが。

キミ:京都に白い恋人はないだろうが。いくらも一味違うぞ。

シン:そういう問題じゃねえよ。何股間でいくら味わおうとしてんだよ。道民がブチ切れるぞ。
   もう飽きたよ、一ヶ月刑務所で過ごすパターンは。

キミ:バター味だぞ?

シン:言っとくけど、バター味のご飯なんてそれほど魅力的じゃないからな。

キミ:京都のときの山菜ご飯よりマシだろ。

シン:むしろそっちのが上品だよ。

キミ:じゃあそっちにするよ。

シン:北海道だからな、北海道。

キミ:贅沢だな…具が入ってる臭い飯なだけありがたく思えよ。

シン:臭い飯の時点でお断りなんだよ。ただでさえ普段毎日食ってるんだからよ。普通パターンで行け普通パターンで。

キミ:ケイ、もう売り物を勝手に食べちゃダメだよ。

ケイ:え〜…またけいむしょでないしょくした〜い…。

シン:何に魅力感じてるんだお前。

キミ:えーと、じゃあ函館の市場に行ったところから始めるぞ。じゃ、目を閉じて。


(3人とも、目を閉じる)



キミ:さあ、函館に着いたぞ〜。

シン:わあ〜、新鮮な魚がいっぱいだ。

ケイ:ほたて!!ほたて!!ほたて!!

キミ:よしよし、早速買ってやるぞ〜。

シン:いろいろあるな。タラ、イクラ、カニ…。

キミ:………マネ子…。

シン:…はない。カニはない。昨日山村紅葉が買い占めた。

ケイ:ほたて!!ほたて!!ほたてー!!

キミ:はいはい。ほら、味わって食えよ。

ケイ:じゅるじゅるじゅるじゅるじゅるじゅるじゅるじゅるじゅるじゅる。

シン:うわ、ハイペースで生食してる…。父さん、あんなに買って大丈夫?

キミ:大丈夫大丈夫。旅行前に競輪で50万勝ったからな。

シン:あ、そういう設定ね。

キミ:設定言うな。

シン:ごめん。

ケイ:ばりばりばりばり。かいがらうめー。

シン:おい、殻まで食うな。腹壊すぞ。

ケイ:なんでもたべられるせっていー。くぴぽー。

シン:…俺はアラレちゃんにはなれないからな。

キミ:さて、函館の塩ラーメンも食ったし。

シン:うわ、勝手に独断行動しやがった。

キミ:今度は十勝に行くぞー!テクテクテク。はい、十勝につきましたっと。

シン:歩いて行ける距離じゃねえよ。

キミ:この世界では人間の徒歩は新幹線を凌ぐんだよ。

シン:食べ走りツアーにする気かよ。武井壮しかついていけねえよ。

ケイ:わー!!うしさんがいっぱーい!!

キミ:おお、こりゃ広大な牧場だな。

ケイ:えー、私がここの牧場主の山本です。

シン:え、あ、おっさん役ね。突然キャラに入るなよ。

キミ:いや〜、いい牧場ですね!牛の毛ヅヤもいいし!

ケイ:丹精こめて育ててますからなぁ!はっはっは…カーッペ!

シン:幼女とは思えないおっさんの完成度だな。

キミ:お、馬もいるじゃないですか。これ、乗馬とかできるんですか?

ケイ:ええ、出来ますよ。どうぞどうぞ。

キミ:よいしょっと。おお、これは乗り心地いいですなぁ!ハイヨー、シルバーッ!!(ガタガタガタギシギシギシ)

シン:…座椅子この3つしかないんだからね。

キミ:パカラッパカラッ…お!美人観光客がこっち見てる!!ひゅーひゅー…わわわっ!!(ボキガタガターン)

シン:予想してたとおりの音が鳴ったな。父さん今日から立って飯食えよ。

ケイ:ぱぱー…はにさぎょうぎがはさまったー…。

シン:お前山本さん食ったろ。

ケイ:おいしかったー。くぴぽー。くぴぽー。苦・碑・Poooooow!!!!!

シン:お前は一回ドクタースランプを読み直してキャラを学べ。

キミ:さあ、山本さんの奥さんが不自然な血だまりに気づいたところで。

シン:なんだこのスプラッターコメディー。

キミ:お次はニセコ町だ!セコセコセコ、はいニセコにつきましたっと。

シン:交通手段が不明だよ。

ケイ:わー!!ゆきがいっぱーい!!

キミ:そうだろうそうだろう。ニセコはスキー場で有名なんだぞ。

シン:父さんよく知ってるな。

キミ:桃太郎電鉄で知った。

シン:…うちゲーム機ない筈だけど。

キミ:…さあ、自分に合うサイズの板やスキーウェアをあそこのフロントで借りるんだ。

シン:買ったな?テメェこの家庭経済大不況の中買ったな?

キミ:さあケイ、このウェアを着るんだ。パパが一緒に手伝ってあげるからね、あの女子更衣室でヒャッホーイ!!

シン:おいこらロリコンハゲコン親父。テメェだけ網走に吹っ飛ばすぞ。

ケイ:おにいちゃん、すきーたのしみだねー!!

シン:……そうだねー。

キミ:…シスコン。

シン:(スカッ)

キミ:(スカッ)

シン:(スカッ)

キミ:(スカッ)

シン:(バシッ)

キミ:いって!!お前、今一瞬目を開いたろ!!

シン:さーて滑るぞー。

キミ:……ちぇっ。

ケイ:おにいちゃん、これどうやってすべるのー?

シン:ん、これはね…。

キミ:スキーも好きだが、君もスキー!!そして君たち二人はキミがスキー!!

シン:………。

キミ:こういう風に滑るんだよ♪

シン:あれ、最大限に悪い見本な。

キミ:次はシンが地球上の生命という生命を笑いの渦に巻き込むすべり方を…。

シン:やらん。

キミ:…やれよ。

シン:俺は加害者になるつもりはねぇ。

キミ:…やれよ。

シン:俺、出川哲郎を見た瞬間に「コイツには勝てない」と思った側の人間なんだよ。あーあーやりませーんっと。

キミ:…やれよぉ…。

シン:ケイ、上手な滑り方はスキー板をハの字にしてな…。

ケイ:うんうん。

キミ:(目を開ける)……(バシッ)

シン:……でな、ステッキをな…。

キミ:(バシッ)

シン:……で、体重移動を前のほうに…。

キミ:(バシッバシッバシッ)

シン:…父さん、一人だけ散らかった部屋の中にいて楽しいか?

キミ:(キョロキョロ)………………(目を閉じる)
   
ケイ:ねえねえ、さむいー…あたたかいところへいきたーい。

キミ:そうだなぁ。もう存分に滑ったことだし。

シン:あんただけな。

キミ:そろそろ予約とってる旅館に行こう!ツルッステーン。ゴロゴロゴロ、ピロリロリーン。いてててて、立てねぇよ〜。よし、旅館に着きましたっと。

シン:いい加減移動法を明確にしろや。何で毎度おさわがせしますみたいなシーン差し込んでんだよ。中年が初々しい勃起するな。

キミ:(たれ目)うふっふ〜。ようこそ、芽離威旅館へ。

ケイ:うわあ〜、きれいなおかみさんだー!!

シン:お前ら、モノマネの得意ジャンル入れ替えろ。

キミ:お荷物お持ちいたしますね。うふっふ〜。

シン:それ、絶対上品な笑い方じゃないからな。

キミ:(たれ目)さあ、こちらの松の間となります。
   うわ〜!きれいな部屋ですねー!!おまけに景色もきれい!!
   (たれ目)ウチの旅館の中では一番お高い部屋でございますからねぇ。うふっふ〜。
   おまけにこの掛け軸!これは高いでしょ〜!!
   (たれ目)うふっふ〜。鑑定団に出したら5万円でした〜。
   わあ、安かったんかい!!

シン:……。

ケイ:……。

キミ:(たれ目)こちらがバスルームです。うふっふ〜。
   わあ、なんと豪華で広いバスルームなんですか!!
   (たれ目)しかもこのバスルームの床下は、収納式になってますのよ。
   うわ〜。これは素敵な仕組みですねぇ〜!
   (たれ目)渡辺さん。ウチの物件、どうですかね?うふっふ〜。
   いや僕渡辺篤史じゃないですよ〜。建ものは探訪しませんよ〜!!階段ばかり褒めませんよー!!あっはっは!!
   ………はあ、はあ……。

シン:……。

ケイ:……。

キミ:……入って来いよ…。寂しいだろ…。

シン:こういうのは陪観者の立場のほうが楽しいんだよ。

キミ:うふっふ〜って笑うの結構顔の筋力いるんだぞ…。

シン:じゃあ普通に笑え。

キミ:たれ目にするのもいちいちめんどくさいし…。

シン:想像しただけでも気持ちの悪いお顔でした。

ケイ:ねえねえ、2かいにげーむがあるんだって!いこうよー!

シン:ゲーセンあるのか。じゃあ、俺ケイと二人で行ってくるから。

キミ:おう。俺疲れたから夕食できるまで寝とくわ。


(ケイとシン、キミから椅子を放す)


キミ:……ンゴー。

ケイ:じゃんけんぽん!ずこー!!あーん、またまけたー!!

シン:えらくレトロなもんにはまってるな。

ケイ:あ、ほくとのけんがある。せっていいくつかな…4かな、5かな…。

シン:幼女がパチスロを分析するな。

ケイ:あー、でもやっぱりげーむってたのしいねー!!

シン:そうだなぁ。

ケイ:そういえばね、おにいちゃん。あたしね、いまようちえんですきなこがいるんだー。

シン:おお、ませてんなぁ。

キミ:……え、聞いてないんだけどそれどういう…。

シン:寝てろ。

キミ:…………ンゴー。

シン:で、どんな子なんだ?

ケイ:えっとねー、かっこよくてねー…。

キミ:……ンゴー…(ガタガタ)

ケイ:あしがはやくてねー…。

キミ:……ンゴゴゴー…(ガタガタガタ)

ケイ:とってもやさしいおとこのこだよー♪

キミ:ンゴゴゴゴゴゴゴゴ!?(ガタガタガタガタガタ)

(ドガッ!!)

キミ:ンゴゴゴッ!!(ガシャーン)

ケイ:…どうしたのー?

シン:いや、このゴジラのメダルゲームがちょっとずつ俺に近づいてきたから蹴っ飛ばしたんだよ。

ケイ:…げーむきってあしあるのー?

シン:あるんだよ。いびきのうるさい足くさゲーム機には気をつけな。

ケイ:はーい。

シン:さ、そろそろ夕食だし部屋に戻るぞ。

(ケイとシン、椅子を元の位置に戻す)


キミ:……。

シン:父さん、まだ寝てんのか?

キミ:……そうだ、幼稚園の先生たちに手を回して仲を引き裂かせるよう…。

シン:…永久に寝かせたほうがケイの未来のためかも。

キミ:(たれ目)夕食できましたわよ、うふっふ〜。

シン:うわ、急に女将出た。

ケイ:わあー!!おいしそうなおりょうりー!!ねえ、パパ!?

キミ:料理…そうだ、その子の弁当に…いやいや、それは人の道を…!!

シン:情緒不安定か貴様。

ケイ:ねえ、ぱぱなんかようすおかしいね。

シン:待ってて。(バシッ)

キミ:あいた!!お前また目を開けただろ!!ちゃんとやれ!!

シン:はい、直った。

ケイ:うちのてれびみたいだね。

キミ:んぐー…まあいいや。じゃあ、食事の前に礼儀よく、いただきますをするぞ。

ケイ:はーい。

キミ:せーの…(パンパンパン)


(3人とも、目を開ける)



シン:食事は2回だよ2回。

キミ:あ、そうか!


(3人とも、目を閉じる)



キミ:せーの…(パンパン)いただきます!

ケイ:いただきまーす!!

シン:いただきます。

ケイ:ぱくぱくぱくぱく。うーん、ぎゅうにくおいしー!!あわびおいしー!!じゃがばたーおいしー!!

キミ:はっはっは、よかったな。

シン:パク、パク。

キミ:なんだシン、普通に食うだけじゃつまんないだろ。料理がどうおいしいか言ってくれよ。

シン:…このコーンとほうれん草の胡麻和えは、一見ただ和えてるだけに見える。
   しかし、ゴマの香りとコーンの甘さ、ほうれん草のうまみが程よいバランス保っていて、完璧に調和している。

キミ:説明口調過ぎて回りくどいよ。

シン:…このコーンとほうれん草の胡麻和えは、甘くてゴマの香りが効いててうまい。

キミ:ありきたり。

シン:いっとくが俺別にヨネスケ目指してねえからな。

キミ:いいか、こういうのはこうやるんだよ…。パク。…うん、なかなかですね。

シン:それヨネスケがまずいときに使うセリフだよ。失礼極まりないよ。

キミ:(極たれ目)うふっふ〜うふっふ〜うふっふ〜…ふぅ〜〜〜〜…。

シン:ほら、女将が怒ってるよ。なんか威嚇してるよ。絶対顔三倍増しで気持ち悪いよ。

キミ:いてて…筋肉つった…。

シン:だから笑い方見直せっての。

ケイ:ねえねえ、このかにさんすっごくおいしいよ!!

キミ:ほう。どれどれ…こ、これは!!

シン:パクパク。うん、確かに肉厚でうまいな。

キミ:食うなぁぁぁぁぁぁ!!!ばしぃぃぃぃぃぃぃん!!!(ぶんっ)

シン:涼しい風が一瞬だけ来たな。

キミ:これは…これはマネ子じゃないかぁぁぁぁ!!

シン:いや、ズワイガニだよ。ズワイガニだと言い張るよ。

ケイ:ずわいずわいー。

キミ:いや、この体の赤み、統制された腕の形…間違いない!!マネ子だ!!

シン:赤いのは茹でたからだし、シオマネキほどの片腕マッチョはどこにもいねえよ。
   ズワイガニだよ。北海道といえばズワイガニだよ。招かれざる潮の地だよ。

ケイ:おいしーおいしー!!ぱくぱくー。

キミ:食うなというたであろぉぉぉぉぉぉ!!ばしぃぃぃぃぃぃぃん!!(ガシャンパリーン)

シン:今何を叩き壊しやがった。

キミ:許さん!!こら、女将!!われらがマネ子になにをしたぁぁぁぁぁ!!!
   (極たれ目)うふっふ〜!?何のことですかぁ!?
   しらばっくれるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!うふっふ〜じゃねぇぇぇぇぇぇ!!!つまんねぇんだよぉぉぉぉぉ!!!

シン:自分のキャラ付けを自分で全否定してやがら。

キミ:(極たれ目)うふっふ〜!!これがズワイガニでございますうふっふ〜!!
   うそつけぇぇぇぇぇ!!!
   (鬼神の如きたれ目)うふ、うふ、うふ…(たれMAX)うふっふっふ〜!!!!!
   笑ってんじゃねぇぇぇぇぇ!!!ぶん殴るぞぉぉぉぉぉ!!!!!

シン:…今相当顔の筋肉鍛えられてるな。

ケイ:だいこくばしらおいしー!!がりがりー!!

シン:ここに来てガッちゃんの本能目覚めやがった。

ケイ:ふぁんふぁんふぁんふぁん。

シン:そうなるわな。

ケイ:お巡りさん、ここです!!ここに私の夫を殺した犯人が!!

シン:ここで山本夫人登場かよ。

ケイ:チョイ役ですわ!!

シン:言うな。

キミ:(たれ目限界突破)お、お巡りさん!!こ、この人たちがぼ、ぼうりょく、ぼうろ、ぼう、う、うふっふ〜!!!

シン:笑うタイミング計算しとけ。



ケイ:ふぁんふぁんふぁんふぁんふぁん。



キミ:おい看守!!今日の飯、バター多すぎだぞ!!

ケイ:ちくちくちくちく。けいむしょのないしょくさいこうー!!

シン:………。



キミ:(パンパンパン)



(3人とも、目を開ける)


シン:……結局この終わり方かよ。

キミ:普通パターンでも、シメはいつも刑務所って決まってるだろ。急に変えたら決まりが悪いからな。

シン:今までずっと決まりが悪いまんまやってきてるんだよ。

キミ:うるさいな。お前こそ途中で茶々入れるなよ。現実に引き戻されるだろ。

シン:ああ。ごめん。

キミ:謝るなよ。ツッコめよ。蹴れよ。足から縛れよ。

シン:マゾかよ。縛る順序の好みなんか知らねえよ。

ケイ:あー、たのしかったー。

シン:まあ、なんだかんだいってな。

キミ:ふう…暇も潰せたし、仕事いってくるぞ。

シン:ああ、がんばってね不二家のバイト。

キミ:任せとけ。今日も可愛い女の子達におっさんが作ったケーキという現実を突きつけてやる。いひひひひひ、いちごすっげぇ触ってるよ〜〜〜いひひひひひ…(すたすたすた)


ケイ:いっちゃったね、ぱぱ。

シン:二つの意味でな。

ケイ:ねえおにいちゃん。こんどはふたりでそうぞうりょこうしようよ。

シン:…お前主導でか?

ケイ:うん!!あのねあのね、いくのはいわてけんのいなかのほうなの!!いくよいくよ!!

シン:……うん…。



(パンパンパン)




ケイ:…とうとうここまで来ちゃったのね。

シン:…ああ。

ケイ:思えば3ヶ月前、あの男から束縛されるのがいやであなたと浮気しちゃったのよね。そして、それがバレたと単に逃亡生活。
   でもここまでくれば大丈夫よ。(ジャー)…りんご、食べる?岩手産だって。(しゃくっ)

シン:い、いや、いい…。

ケイ:…このりんご、あたし達に似てると思わない?しょっぱいけど、ほんのりとだけ甘い。大して赤くはない。みずみずしくもない。
   でも……皮は硬い。ふふふっ。なーんてね。

シン:ごめんもうギブアップ。ついていけない。皮が硬さからくるメッセージ性もよく分かんない。
   なあ、何で毎回お前主導だと90年代のドラマみたいな展開になるんだよ。お前幼稚園児だよな?

ケイ:なぁーに?子供扱い?勘弁してよね。私はいい大人ですよーだ。べぇ!!ふふふっ。

シン:俺もう目をガン開きしてるからね。なぁ、何でもも組の園児がそんな浅野温子みたいな顔になれるの?

ケイ:そう、私は子供じゃないの。あなたを、夢中にさせることだってできるんだからね?…おいで?

シン:おいおい、俺この年で犯罪者になりたくねえよ。近づくなって。

ケイ:ねえ、私をあなたでいっぱいにしてよ。あいつを、あの男を忘れさせて。ねぇ。

シン:こいつ目をつぶってるのに正確に近づいてやがる。逆ステルスかよ。いいから早くやめろって…そうだ、忘れてた。(パンパンパン)

ケイ:に、ぎ、れ?はい承知いたしやしたー。何回にぎりやしょうかー。棒寿司いきやしょうかー。

シン:うわ、悪化した。妹だけど後頭部蹴飛ばしたい。やめろ。ズボンをまさぐるな。やめろって…………あ。

キミ:………………………。

シン:父さん……バイトは?

キミ:…財布忘れたから取りに帰ったら…………娘が息子にご奉仕してたという………この現実………。

シン:分かりやすい誤解はやめろ。ケイが想像旅行をだな……。

キミ:あの好きな子の話はカモフラージュってワケか…。ずる賢くなったもんだなぁ、我が息子よ!?

シン:これなんていったらいいんだろう。神様、もう少しかっこいい罰を与えてくれ。

ケイ:うぅぅぅぅっさいわねぇ、このダメ男がぁ!!!!!!

キミ:!?!?!?!?

ケイ:アンタがすき放題やってっからアタシも好き放題やらせてもらってるだけじゃない!!浮気は浮気で返すもんでしょ!!ええ!?

キミ:え、え、え、えええええ???

ケイ:アンタがあの女にうつつを抜かさなかったら私はこんな行動とる必要なかったのよ!!
   いい奥さんになることが生きがいだと思ってがんばったのに、まさか浮気がご褒美だとはね!!
   ばれたらばれたで「浮気は男の勲章だろ」だぁ!?浮気すりゃ全ての装備が可能になんのか!?あぁ!?

シン:これ、9割方母さんのセリフだよね。あの人FF6大好きだもんね。

キミ:ヒィィィィ、イフリートさまぁぁぁぁぁぁ!!!!お慈悲を、お慈悲をぉぉぉぉぉ!!!!

ケイ:お慈悲で済めばアルテマウェポンはいらんのじゃ、あああああああっ!!??

シン:顔が温子からかおる子になって来ました。凄いよね、これをリアルだなと感じる一家って。平凡はどこだ。

キミ:やだやだぁ!!!あのときのフラッシュバックがすさまじいー!!ケイ、目を覚ませ!!(パンパンパン)



ケイ:あ、おわり?あーたのしかったー。あれ?ぱぱおしごとは?

シン:あのボルテージからこの平常心。お前は烈海王も倒せるよ。

キミ:あ、ああ。いってきます。あ、あれー?膝があのときみたいになってるーあはははははははは(ガタガタガタ)

シン:…お気の毒様。

ケイ:ぱぱどうしたのかなぁ。

シン:ケイ、お前凄いよな。あそこまでの感情の引き出しは幼稚園児には出せないぞ。どれが本当のお前なのか分かんなくなるよ。

ケイ:えー?けいはけいだよー?

シン:まあそうだけどさ。ははは。




ケイ:さーて、どのけいが、ほんものでーしょう?


シン:………え?









ケイ:いつ分かるのか、楽しみだね、おにいちゃん。

   私が死ぬまで、いろんな私を、見せてあげるから。



   私達の想像旅行はね、永遠に、続くんだよ。



   あはは、あはは、あははははははははははははハハハはははハハははハハハはははハ。

   歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯。



シン:……………。















ケイ:えーんおにいちゃーん、むりなきゃらやるのつかれたよー。

シン:よしよし。

 


  NO.18                   あかつき

 

「Aces High」

前橋:どうもー! あかつきZ(ゼータ)でーす! よろしくお願いしまーす!

宇都宮:はいよろしくー。
    LC−杯ということでね。今日も漫才頑張っていきますよ。

 前橋:いきなりでアレなんだけど、宇都宮って小さい頃何になりたかった?

宇都宮:大人。

 前橋:うん、あのー……もうちょい具体的にお願い。

宇都宮:具体的にだとー、大人の医者ね。

 前橋:あー、医者ねー。医者はいいよねーカッコイイもんねー。

宇都宮:医者はいいわよー。定期的に診察しに来るお年寄りとお話しして薬出すだけの仕事だし。

 前橋:随分と考えの擦れた子供だったんだね!

宇都宮:でも、診察より手術の方が憧れあるのよね。
    ほら、自分の手で人を救っているっていう感覚があるじゃない?

前橋:あー、ありそう。

宇都宮:だから今日は私が執刀医役やるから、前橋は助手役やって。

前橋:オッケー。



宇都宮:今からオペを始めます。

 前橋:はい!

宇都宮:メス。

 前橋:はい!

宇都宮:アセ

 前橋:はい!

宇都宮:タバコ。

 前橋:何一服しようとしてんの!  終わるまで我慢してください!

宇都宮:……ガーゼ。

 前橋:はい!

宇都宮:アセ。

 前橋:はい!

宇都宮:パス。

 前橋:……はい!?

宇都宮:アセ。

 前橋:……はい。

宇都宮:サーブ。

 前橋:!?

宇都宮:レシーブ。

 前橋:バレーやってない!? サーブとかレシーブとかさぁ!

宇都宮:バレーじゃないわ、キンボールよ。

 前橋:知らないよそんなスポーツ! なにその日本語にしたらすごく卑猥そうな球技は!
    やるならちゃんとやって!

宇都宮:はいはい。 ニッパー。

 前橋:おい。

宇都宮:カッター。

 前橋:おいよ。

宇都宮:接着剤。

 前橋:さてはプラモデル作ってるね!? もう手術でもなんでもないよね!?

宇都宮:よし、完璧な手術が出来たわ。

前橋:どこがよ。

宇都宮:「病院シリーズ26 手術室(執刀医・患者付き)」

 前橋:結局プラモデルじゃない! いい加減にして!

2人:ありがとうございましたー。



















宇都宮:――お疲れ様。さすがに1週間毎日同じネタすれば慣れたものね。

 前橋:これで明後日のLC−杯もバッチリだね!

宇都宮:さて、じゃあそろそろ会場がある北海道に向けて出発しましょうか。

 前橋:おう!





―――16時55分発 羽田発新千歳行き スカイマーク723便 機内

 水戸:ご搭乗の皆様ー、当機はまもなく離陸いたしますので、ご自分の席に―――



 前橋:札幌までどれくらいかかるの?

宇都宮:そうねー、シンガポールからロンドンとサンフランシスコ経由するからー…

 前橋:逆回りで、じゃねーよ。

宇都宮:最短ルートなら1時間半ね。

 前橋:1時間半かー…………うっ!!?

宇都宮:どうしたの? 家に置いてきたオカメインコの富三郎が気になるの?

 前橋:どーゆーネーミングセンスだよそれ。そーゆーんじゃなくて、急におなかに激痛が…。

宇都宮:……………………賞味期限2カ月前のロールケーキを食べる賭けに負けた?

 前橋:あー…………わりとマジでそんなんかも。食当たり系…? いだだだ……!



 水戸:(前橋の元へ駆け寄って) お客様…どうなさいましたか?



 前橋:すいません……腹痛に効く薬ってありますか……?

 水戸:ふ、腹痛のお薬…ですか……? えー……えっと……。

 前橋:なんでもいいですよ…。正露丸でもビオフェルミンでも…。

 水戸:申し訳ございません……あいにく当機は麻…医薬品は積んでいないもので…。

 前橋:ん……? あ…あ、そうですか…。

 水戸:しょ、少々お待ち下さい!



    すみません! お客様の中にお医者様が看護師さんはいらっしゃいませんか!?

 前橋:え、ちょ。そんな大ごとにしなくても…。



宇都宮:あらあら…(挙手)



 前橋:え、ちょ。さりげなく何やってんの!?

宇都宮:ん? ようやく日頃の練習の成果を見せる時が来たなーって。

 前橋:れ、練習…?

宇都宮:さっきも一緒にやったじゃない、手術の練習。

 前橋:あの練習は今のためにしてる練習じゃねェー!!

 水戸:……あっ! お医者様ですか!?

宇都宮:はい。都内の大学病院で医者をしてる者です。

 前橋:嘘つけぇ! 家賃7万のワンルーム住まいのしがない芸人だろーが!

 水戸:え…? お医者様なんですか? 芸人さんなんですか…?

宇都宮:私は医者で、隣の人はショーパブで清水ミチコのモノマネをしてる芸人と言ってました。

 前橋:勝手に格差つけるんじゃない! ほんでモノマネ芸人のモノマネが許されるのは関根麻里だけだよ!
ウチとこの人はどっちも芸人で、一緒にコンビ組んでるんです!

 水戸:は、はぁ……。

宇都宮:この人、芸人だから口から出任せを言う事に抵抗が無いと言いますか…。まあ、一種の職業病のようなものです。

 前橋:それ自分で言ってて悲しくならないの?

 水戸:そうですか…………。 それは重症ですね……。

宇都宮:ですので、それも含めて今すぐにでも手術を要する状態にあると私は判断しております。

 水戸:……それなら仕方ないですよね。私も出来る限りお手伝いします!

 前橋:三言の会話で劇的に話を進めるのは止めろおおお!!

 水戸:私は……まず何をしたらよろしいでしょうか?

宇都宮:そうね。手術となると、赤い物を飛び散らす可能性があるから近くの乗客を前へ移動させてください。

 前橋:赤い物って!? 赤い物ってまさか「ち」で始まって「ち」で終わる物じゃないよね!? ね!?

宇都宮:それと、手術用の医療器具……は流石に無いか。 ニッパーとカッターとセメダインの準備をお願いします。

 前橋:んなモンで代用できるかぁ! 今からプラモデルでも作るんか!?

 水戸:か、かしこまりました! すぐに準備します! 皆さん聞いてくださーい!

 前橋:あの……今からでも遅くないから、なかった事にしない?





 水戸:先生! 準備が整いました!

 前橋:うわー、気が付いたら手際よくフラットにした座席に縛り付けられてるしー。やっべ逃げらんね…。

宇都宮:そうなる前に逃げなかったアンタもアンタだと思うけどね。

 前橋:あの状況で逃げられるワケねーわ!!





 水戸:すみません! お客様の中に腕っ節に自信のある屈強な男性はいらっしゃいませんか!?





 前橋:初めて聞いたよ。CAさんが医者以外の人を探してんの。

宇都宮:私もまさかそこで野村将希と石丸謙二郎が名乗り出るとは思わなかったわ。

 前橋:筋肉モリモリな第三者まで呼ばれたら、状況的にも物理的にも逃げれるワケないじゃん…。

水戸:あのー……私、何か無礼をはたらいてしまったのでしょうか…?

宇都宮:いいえ、そんな事ないですよ。 機転の効いた手際のよい対応でした。





 水戸:大丈夫です。人命救助という名の下ですから、ヘンな所を触ってしまってもセクハラには問われません。





 前橋:あの一言でトドメ刺されたって思ったわ。

宇都宮:筋肉オッサンズも目の色を変えて人命救助に力を貸してくれたわ。

 前橋:だから人命救助の4文字でなんでもキレイに片付けようとすんじゃねーよ。

 水戸:あのー…………おなかの方はもう大丈夫なんですか……?

 前橋:うん? あ、そういえば…………。

宇都宮:(カッターで前橋に切りかかったー)

 前橋:みぎゃあああ!! いでええええ!!

 水戸:だ、だ、大丈夫ですか!?

宇都宮:これは重症ね……。やはり手術を……。

 前橋:おめー最低の医者だな!! いや医者でもねーけど!

 水戸:先生! 患者さんが苦しそうです…早くオペを始めましょう!

宇都宮:そうね、それではこれより…………何かを切って取って繋いで結ぶ手術を始めます。

 前橋:具体的に言えェ!!!

宇都宮:ニッパー。

 水戸:はい。

 前橋:ストオォーップ!! 手を止めろこのサイコキラーどもがぁ!!

宇都宮:何よ。

 前橋:宇都宮、ちょっと耳貸せ。

宇都宮:私の耳はニッパーじゃ切除できないけど?

 前橋:そーゆー意味じゃねーしウチの耳もそうだよ! あーもういいや、このまま言うわ。



    これさ、全部冗談でやってるんだよね?

宇都宮:え?

 前橋:ほら、テレビのドッキリ企画とか、そーゆー類のイタズラだよね? マジでこれから手術しようだなんて思ってないよね?

 水戸:そう…なんですか?

宇都宮:なにいってんの? 本気でやらない手術があるの?

 前橋:え……?

宇都宮:私は幼い頃からずっと外科医になって手術をしたい、人の命を救いたいって本気で思って生きてきた。
    それで芸人になった今も夢を諦めきれずに、ここ1週間は毎日手術の練習してるの。
    そして巡ってきたこのチャンス。
だから…今が長年の夢を叶える最初で最後の時かもしれないの! わかるでしょ!?

 前橋:ぜーんっぜんわかんね。

宇都宮:なんで!? あんなに一緒に練習してきたでしょ!?
    舞台に立って、客に見てもらう実戦練習だってしたじゃない!

 前橋:だからあの練習は本番のためにしてた練習じゃないんだってば!

宇都宮:ちょっと待ちなさい……。本番のための練習じゃない……?
    じゃあ芸人は何のために「アレになりたい」「コレになりたい」って言って漫才してんのよ!!

 前橋:客を笑わせるためだよ!! それくらいわかれよ!

宇都宮:笑わせるため……? ふざけないで……私は本気で医者になりたくて練習してたの!!
    そこらのおちゃらけ漫才師と一緒にしないでちょうだい!

 前橋:さてはおめーバカだろ。愚直タイプなバカだろ。

宇都宮:…………はっはーん。もしかしてアンタ、私がド素人だから手術されるのが恐いと思ってるの?

 前橋:もしかしなくても、それしかねーべ。

宇都宮:ふふ、大丈夫よ。私『お医者さん検定』準3級持ってるから!

水戸:まあ!

 前橋:ねーよそんなフザけ倒した検定! んで準3級ってなんだ! 絶妙に聞いた事ない微妙さだわ!

宇都宮:前橋…光栄に思いなさい…。後に医学の歴史に名を残すであろう私の最初の患者になれるんだから……!!

 前橋:あの……宇都宮ぁー……?

宇都宮:ふふ……さあ、オベの始まりよ。 ニッパー。

 水戸:はい。

 前橋:本気で手術するならまずそこ変えろよ! ニッパーは人体に使う道具じゃねーから!

宇都宮:あっ…………そうね、私としたことが大切な事を忘れていたわ……。

 前橋:やっと気付いたかー…。

宇都宮:CAさん、すみません。麻酔か、それに近い物は機内にありますか?

 前橋:そういう事じゃねェ!!

 水戸:えっと…………たしか、ケタミンとフェンタニルなら…。

宇都宮:それで構いません。ありがとうございます。

 前橋:あの、今言ったケタなんとか? 聞いた事ないんだけど…。

宇都宮:ああ、大丈夫よ。ただの麻薬だから♪

 前橋:何がフルスマイルで「大丈夫」だよ!! よゆーで違法じゃ違法!

宇都宮:前橋知ってる? 「麻酔」はね、「麻薬で酔わせる」と書くのよ?

 前橋:だからなんだってんだアァ!! そもそも旅客機に麻薬積んでること自体おかしいんだよ!

宇都宮:……それもそうね。どうしてかしら、CAさん?

 水戸: …………そ、そんな事より! 早く手術しないと患者さんの命が!!

宇都宮:おっと、いけないいけない。何があっても手術を止めてはいけないわ。

前橋:こんのクズどもがァ!!

宇都宮:ふふ…目を瞑ってればすぐ終わるからねー。

 水戸:頑張ってください!

 前橋:イヤアアアアアアアアアアアアアア!!!

















(ぐるるる ごろろろ…)

 前橋:うわっ、腸内環境むっちゃよくなってる。

宇都宮:大 成 功(ピースサイン)